第91回皇后杯で、連覇の可能性を持っていたチームはもちろん1つしかない。前回大会で初めて日本一の称号を勝ち取ったデンソーアイリスだ。今大会も当然ながらファイナルラウンドに進出。Wリーグフューチャーから唯一、そして現行のフォーマットで初めてファイナルラウンド進出を果たした東京羽田ヴィッキーズの挑戦を退け、12月14日に行われた準決勝の相手は昨シーズンWリーグ覇者の富士通。いずれも昨シーズンに頂点に上り詰めた両者は、4年連続で準決勝での激突となった。大接戦となったことは多くの人にとって予想通りだったはずだ。
デンソーにとって難しかったのは、第3クォーター残り2分45秒、馬瓜エブリンがリバウンド時の接触でコートに倒れ込み、ベンチに下がってしまったことだ。その存在感の大きさは改めて触れるまでもなく、最終的に4年連続の決勝進出を逃す要因の一つであったことは確かだろう。しかし、その点差はたった3点。エブリンがコートに戻ることができなくても、デンソーには勝つチャンスが最後まであった。高橋未来によれば、チームはあくまでもポジティブだったそうだ。
「最後競ったときにエブリンさんも出られなかったんですけど、チームの雰囲気はすごく良くて、リードされてる状態でしたけどヘッドダウンせずにみんなで声をかけ合ってできたことはすごく良かったなと思います」
チームとしてのゲームプランは明確だった。大きなカギとなったのは、リーグ戦の直接対決2試合でいずれも富士通を下回り、16試合トータルでも劣っていたリバウンド。この日は富士通の計38本に対し、デンソーは39本とわずか1本とはいえ上回ることができた。リーグ戦2試合よりも競った展開に持ち込めたのは、その成果によるところも大きいに違いない。高橋自身もその意識が高かったことが、17分54秒と普段より少し出場時間が長くなった一因なのではないか。
「いろいろ細かいことはあるけど、勝負を決めるのはリバウンドと走ることだというのは言われてました。ディフェンスもレギュラーシーズンで対戦したときとは少し変えたりしたんですけど、重要なのはそこじゃなくて、最後はリバウンド、全員でリバウンドを徹底しようということでした。中はセンター陣が抑えてくれるので、外に跳ねたボールを取ること。私は内尾(聡菜)さんにマッチアップしてたので、身長のミスマッチがある分気をつけないといけないということを意識してました」
この日の高橋は勝負強さも発揮した。得点は3ポイント2本の6点のみだったが、その2本は第4クォーターの残り3分27秒と残り1分0秒という大事な時間帯。後者に関しては、1点差に迫るという大きな1本だった。間違いなく相手に大きなダメージを与えることができたが、「出来が良いときと悪いときがあるので、平均的に決められるようにしていきたい」と語る高橋は反省も忘れていない。