篠山竜青はどう生きるか(中編)より続く
人生の夏が終わり始める36歳。
肉体的には下降線の一途を辿る時期に、篠山竜青は元気だった。
「今シーズン、ネノさんになって夏にめちゃくちゃ鍛えられました。それこそ群馬戦(10月25日、26日)も連日25分以上出たのがもう本当、6、7年ぶりぐらいじゃないかなと思うんですけど、どっか変な痛みだったり張りなく元気にやれていたので、そこら辺のコンディションはむしろ、ちゃんと上げられていってるなっていう感覚は持ってやっています。」
近年では選手の高齢化が年々進み、篠山の年齢の選手も珍しいわけではないが、実際にコート上でメインプレーヤーとしての役割を負うものはそう多くない。
そのうちの1人であるだけでも驚くべきことだが、本人的には「体調的にもコンディション的にもすごく良い」そうで、「まだまだいい感じで成長していける」楽しみが強いらしい。
「身体に関することはもっと早くから勉強して、知識として持っておくべきだったかなっていうのはすごい感じています。年を追うごとにいろんなことにチャレンジしたり、制限してみたりってトライはしてるんですけど、そういうのをもっと早くやっていれば、もうちょっといい選手になれてたかもなっていうのは感じるときがあります。」
自身の身体に対する理解と、適切なケアの運用がさらなる伸びしろをもたらしている。
そうなってくると篠山はどこまでいけるのか、いつまで選手を続けてくれるのか、そんな話を聞いてみてもいい頃合いになってきている気がする。
「新アリーナが2年延びちゃったんですよね。
だからプレミアの登録に申請したのは川崎駅にできる新アリーナじゃなく新とどろきアリーナらしくて、新とどろきアリーナが2028年なので、まずは新とどろきアリーナまでは頑張りたいなって感じています。ひとつの目標として、新とどろきアリーナを川崎の一員として迎えたいっていうのがいまはひとつのマイルストーンです。」
2028年、4年後、40歳。
「あと4年、けっこう長かった(笑)。長いなって感覚になっちゃいましたね。でも40。40は1個のターゲットかもしれないですね。
本当にそれこそ、毎節圭さん(五十嵐、新潟アルビレックスBB)のスタッツとかチェックしてます。圭さんがいま新潟でめちゃくちゃプレーしてるじゃないですか、44歳で。これだけやれてるんだから、俺も頑張んなきゃなみたいな気持ちにはすごいさせてもらってますね。」
49歳の大記録をさらに更新しそうなレジェンドがウヨウヨいるリーグで篠山の掲げる40歳はどうにも控えめな印象を拭えないが、あくまでも中間目標である意欲も隠しきれてはいない。
いつまでやるのか、いつまでできるのかも選手にとって重要な問題だが、それ以上に選手ではなくなった後にどう生きるのかが肝要なことだと個人的には思っている。
バスケット選手は引退後なにしてるのかな、は意外にも長いあいだ自分の好奇心を刺激し続けていて、篠山にもそれを聞いてみたくなった。
「まったく自分になにができるのかわからなくて。いま、不安しか抱えてないですね。」
この答えは驚きと少しの納得感を僕に与えた。
業界の発展を念頭に行動を起こし続ける篠山だからこそ、いわゆるキャリアの問題についてもなにかしらの考えを持っているものと思っていた。