【前編・ALPHAS.EXE 落合知也】勝つために全部やる男 より続く
3×3.EXE PREMIERのファイナルから1週間後の9月29日、落合知也は早くも新しいシーズンの開幕を迎えていた。B3・しながわシティバスケットボールクラブの一員として、再び5人制のコートに立ったのである。越谷アルファーズの練習生という肩書を持ちつつ、事実上3×3に専念する形でパリオリンピック出場を目指したが、その夢は叶わなかった。しかし、そこで落合にはまた次のステップが見えてきていたのだ。
「選手としてさらにレベルアップするには、またBリーグでプレーするのも良いんじゃないか、新しいチャレンジをしたいと思ったんです。いくつか他のチームからもオファーはいただいて、越谷でやれるチャンスもあったんですが、3人制としっかり両立できるのはしながわシティだけだったんですよ。いざチームに入ると、昔のアルファーズみたいな空気も感じたんです。一から作り上げていくようなベンチャー精神が好きなんですよね」
佐野智郎ヘッドコーチの存在も、しながわシティを選んだ理由の1つだった。法政大学の先輩である佐野HCとは古くから交流があり、落合が右膝前十字靭帯切断の重傷を負った際は佐野HCが見舞いに訪れたこともあったという。その佐野HCからは昨シーズンもオファーがあったそうで、「これも縁だ」と感じたことが入団に結びついた。3×3.EXE PREMIERのファイナルの2日間、同時に天皇杯2次ラウンドを戦っていた佐野HCからは「思いきってやって、優勝してこい」というメッセージが届いていた。
「僕がいたほうが外国籍選手の負担も減るのに、そうやって個人のキャリアを応援してくれる佐野コーチは特別だと思います。3×3に専念することもできますが、自分も常に刺激が欲しいし、今回は佐野さんの想いに応えたいという気持ちが強い。チームのために全身全霊をかけてやりたいと思わせてくれてます。B3もレベルが上がってるので、B2に昇格させたらそれも一つの経験として自分のキャリアに残ると思います」
3×3の試合を優先して欠場することもありつつ、落合はしながわシティの重要なピースとして奮闘。10月25日、東京八王子ビートレインズとの試合では24分49秒出場し、勝利に貢献している。外国籍選手2人と同時にコートに立つ、いわゆる3ビッグのラインアップで、守ってはタレン・サリバンやデイビッド・ドブラスといったタイプの異なる外国籍選手にマッチアップし、攻めては日本人選手に対してミスマッチを生かしたポストアップでオフェンスの起点となった。幅広いプレーができるのも3×3の豊富な経験があればこそ。自身に与えられた役割を遂行し、信頼に応えることができているという実感も強く持つ。
「チームに合流する前から、佐野さんに『落合がこういうプレーをしてくれたらチームは良くなる』とか『落合はこういうふうに使いたい』という話もされてましたし、実際その通りに期待してくれて、これだけ長くコートにも立たせてもらってるので、僕も信頼してます。僕は強いチームにいた経験もあるので、良いチーム、負けないチームになるためにどうすれば良いか、そこに自分の経験は生かせると思います。長い時間コートに立たせてもらってるのは、選手としてはすごく幸せなこと。その期待に応え続けるのが仕事だと思ってます」