「未知の挑戦。自分たちがどのポジションにいるかが予測できない」大神雄子ヘッドコーチ
「今シーズンのロスターを見て分かるとおり、本当にビッグチャレンジの年になる」とは、トヨタ自動車アンテロープスの大神雄子ヘッドコーチだ。トヨタ自動車からENEOSサンフラワーズへ移籍し、3シーズン目を迎えたチーム最年長の長岡萌映子は「若い分、やっぱり失速してしまったり、小さいミスでガタガタと行きがち」というのがそれぞれの現状である。2020年代に入り、最初の2シーズンはトヨタ自動車が連覇。翌2022-23シーズンはENEOSがチャンピオンに返り咲いた強豪同士。だが、今シーズンは互いにZ世代の若い選手たちが半数以上を占める。ENEOSは大黒柱の渡嘉敷来夢と岡本彩也花がアイシン ウィングスへ移籍し、トヨタ自動車もチームの半分となる6人のルーキーを迎え、新たなチームとなって始動。かつてのチャンピオンチーム同士による2024-25シーズン開幕戦は、それぞれの伝統を継承しながら手に汗握る白熱したゲームとなった。
開始6分で13-3と先手を取ったトヨタ自動車は岡本美優、田中平和のルーキーを先発で起用。ベンチで出番を待つルーキーたちも、コートに入るや否や思い切り良いプレーでそれぞれの役割を果たす。対するENEOSは、トヨタ自動車から戻ってきた梅沢カディシャ樹奈、海外リーグを経て日本に復帰したオコエ桃仁花の新戦力がペイントエリア内で経験の差を発揮する。「そこだけではないが、インサイド陣のファウルトラブルが続いてしまったのがひとつの敗因」と大神ヘッドコーチは述べ、78-72で開幕戦はENEOSが勝利した。ルーキーの田中こころがデビュー戦で11点と活躍。3ポイントシュートは2本放っていずれも外れたが、それ以外のシュートは100%決め、非凡さを見せつけた。ティム・ルイスヘッドコーチも、「ルーキーながらハイレベルなプレーだった」と賞賛。トヨタ自動車もチームハイの17点をマークした岡本をはじめ、ルーキーたちが揃って開幕戦から得点を記録する。
しかし、勝負どころは「ベテランたちが引っ張ってくれた。例えば、長岡選手が大きく勝利に貢献してくれたこともすごくうれしい。ベテランの安定感が、若いチームにとってものすごく重要である」とルイスヘッドコーチが言うとおりの存在感を発揮。トヨタ自動車も同じく、逆転された後は安間志織が勝負強くゴールを奪い、終盤は山本麻衣が勝負強さを見せていた。
先勝したルイスヘッドコーチは、「昨シーズンよりも強いチームになっている」と強調し、ENEOSにとってもこの勝利が大きな自信となる。大神ヘッドコーチは「未知の挑戦。自分たちがどのポジションにいるかが予測できない」と不安を抱きながらの開幕戦だったが、手応えを感じられる惜敗だった。経験浅い選手が多いからこそ、「もっとチーム内からサバイバルをして、調子の良い選手が出ていくことになる」と大神ヘッドコーチは続ける。ルイスヘッドコーチも「どんな状況でも積極的に若手を試合に出していく」と述べ、翌2戦目は高校チャンピオンの京都精華学園高校出身、ルーキー八木悠香が初出場を果たし、初戦の田中を上回る13点をマーク。実戦を通じて経験を積むプレータイムに平行し、勝利に貢献できる存在へ成長して行く。