「僕は楽観的なんです」という岸本隆一の言葉を聞いて思い出したのは2016年、Bリーグ開幕直前に行ったインタビューだった。それまでのキャリアを振り返った岸本は笑顔でこう言ったのだ。
「バスケットに関しては、僕はすごくラッキーな男なんですよ」
最初のラッキーは沖縄の北中城高校から大東文化大に進んだ2年目、あこがれの先輩でもある田中将道が腰を痛めたことで急遽出番が回ってきたことだという。「先輩のケガをラッキーと言ってはいけませんが、それまでプレータイムが少なかった自分が主力になるきっかけとなったのは確かです」── 。もう一つのラッキーは当時bjリーグだった琉球ゴールデンキングスに入団した年。チームには与那嶺翼、並里成という力のあるPGがいて、「しばらくは “下積み” を覚悟していた」という。ところが、そのシーズンを前にして与那嶺は移籍、並里はアメリカに旅立ち、いきなりメインガードを任されることになった。出場した47試合で躍動すると “超新星” の呼び名とともに新人賞を獲得。秋田ノーザンハピネッツと対戦したファイナルでは34得点を稼いでプレーオフMVPにも選出された。
「入った年に自分の席が用意されてたみたいな感じで、本当にラッキーでした」
なるほど、それだけを聞けば、確かに岸本はラッキーマンなのだろう。だが、真のラッキーマンとは、いきなり訪れたチャンスをしっかりものにできる選手を指すのではないか。そのために積み重ねてきた自身の努力については触れず、「僕はラッキーな男なんです」と笑ったあの日の岸本が、幾多の苦境を乗り越えてきた自分を「僕は楽観的だから」と評した目の前の岸本と重なった。
プレッシャーも自分を成長させてくれるものの1つ
── 岸本さんはbjリーグ時代を合わせるとキングス一筋13年目のシーズンを迎えます。唯一の生え抜き選手としてチームの顔とも言える存在であり、その分背負うものも大きいと思うのですが、荷物が重いと感じることはありますか。
応援してくださる皆さんをはじめ、チームに携わるいろんな人たちの思いを背負ってプレーしているのは間違いないし、その自覚はあります。でも、その重さや大きさについて特に考えたことはないですね。もちろんプレッシャーがないわけではありませんが、僕はプレッシャーを感じるのは別に悪いことではないと思っているんです。それに押しつぶされちゃダメだけど、シーズンを戦う上でみんなが同じ方向を向くとか、同じものを目指すとか、その過程でプレッシャーは必要なんじゃないかと。うまく言えませんが、それがあってこそ得られるものがあると思うんですね。僕自身、背負うものがあったからこそ成長できたと思っているので、背中の重みは苦ではありません。まあ、昔はそうでもない時期もありましたが。