足が尋常ではないくらいブルブルと震えて…
チャンスは誰にでもやって来る。しかし、それを掴める者は限られる。逃したチャンスを後悔する一方、気がつかないまま過ごしてしまうことも少なくはない。2月2日、開幕前から川崎ブレイブサンダースの練習に参加してきた益子拓己は、チャンスを掴んだ。練習しかできない日々に挫けることなく、そのチャンスを信じて前向きに努力し続けた姿を佐藤賢次ヘッドコーチは評価する。開幕から約4ヶ月が経過した2月3日、特別指定選手として過ごした古巣の京都ハンナリーズを相手にデビューを飾った。
試合前日の移動中から、「もう胃が痛すぎて……バスケができるようなコンディションではなかったです」と極度の緊張と見えないプレッシャーにより、益子は腹痛に襲われる。薬が効き、試合時間には痛みこそ引いていたが、不可思議な体の異常が続いた。第2クォーターに3分13秒間コートに立ったが、その裏側では「もう、ずーっと尋常ではないくらい足がブルブルと震えていて、全然おさまらないんですよ」と産まれたばかりの子鹿のような状態だったそうだ。
一夜明けた2戦目は、16分12秒の出場機会を与えられた。跳躍力を活かしたシュートで初得点を挙げると、第4クォーターだけで11点を記録。「たぶん古巣だったこととデビュー戦ということで、いろんな人たちから励ましのメッセージをいただきました。それで自分も昂ぶって、緊張を乗り越えられたと思います」と多くの支えによって力を発揮する。2月7日のホームデビュー戦は、「いつ呼ばれても自分が出る準備はできていましたし、少しは落ち着いてプレーできました」と話す琉球ゴールデンキングス戦は、自己最多の12点と活躍。ガチガチだった初戦に加えて、10分以上の出場時間を得られ、得点できた二戦目以降の4試合を振り返ってもらった。
「どちらかと言えばシュートが入っているから良かっただけで、課題はもう山ほどあってすごくチームに迷惑かけていると思っています。役割を全うする部分では調子に関わらず、シュートを打つこと、走ること、リバウンドをとることが常にやらなければいけないことです。ディフェンスもオフェンスも、自分の課題に対して一つずつクリアしていきたいです。それを含めてプレータイムが増え、チームの勝利に貢献できるようなプレーをしないといけないと思いながらバイウィークに入りました」
成長を求め、有意義な時間を過ごすことができた練習生活
バイウィーク期間中は2つの日本代表が活動していた。3×3日本代表合宿に招集された益子は、「ハーフコートでも6人しかいないので広く使うことができ、アグレッシブにリバウンドを取りに行くところは絶対に3×3の経験が活かされています。5人制よりもボールプレッシャーやスクリーンが激しいスポーツなので、フィジカルに戦うところは合宿を終えてチームに戻ってきてからも継続していきたいです」と毎回得られるものも多い。一方、ようやくスタートラインに立った川崎から数日間とはいえ、「課題がある中でチームを離れることが、自分の中では怖かったです。その遅れを早く取り戻さなければいけないと今は思っています」と焦る気持ちもあった。