オンザコートルールの関係で帰化選手が重宝されるBリーグのトレンドは今シーズンも変わらず、開幕前にはジョシュ・ハレルソン、開幕後にはチリジ・ネパウェが日本国籍を取得。2人は、練習生として合流していた佐賀バルーナーズ、広島ドラゴンフライズとそれぞれ選手契約を交わしている。
これはジュフ伴馬(東京八王子ビートレインズ)の記事にも書いたことだが、B3には従来から帰化申請中選手枠と留学実績選手枠があることで、日本国籍を持たない選手もB1・B2の帰化選手とほぼ同じ扱いで選手登録できる。しかし、帰化選手の数が増えたことなどが理由で、今シーズンのB3には伴馬の他にも帰化選手が存在する。残念ながら坂本ジェイ(ヴィアティン三重)は開幕早々に引退してしまったが、アースフレンズ東京Zにはファイ サンバが加わり、横浜エクセレンスにはソウ シェリフが加わった。
まだ10試合も消化していないとはいえ、後者は特にその活躍が光る。10月21日の東京八王子戦では22得点。そこまでの5試合に限れば、そのうち4試合で2ケタ得点を挙げ、1試合平均も13.2得点とオフェンスの一翼を担った。帰化選手としては申し分のない働きだ。
その活躍の要因の1つとして、ビッグラインアップを挙げることができる。3人の外国籍選手のうち、グラント・シットンは206cmのパワーフォワード登録だが、アウトサイドで生きるシュータータイプの選手。シェリフとの同時起用でポジションバランスを保ちつつサイズアップできることは、今シーズンの横浜EXの武器になる。石田剛規GMも「グラントが活躍するには彼の存在が必要。ハードワークしてくれますし、どんな場面にも柔軟に対応してくれて、スタッツに残らない部分でもチームを助けてくれている」と信頼を置き、「覚悟を持ってB3に来てくれたと思うので、長くなってきたキャリアの中でもここを彼の一番生きる場所、輝ける場所にしていきたい」と語る。
東京八王子戦まではオフェンス面での活躍が目立ったが、第4節の香川ファイブアローズ戦は2戦とも1ケタ得点に終わった。これは、今シーズンの横浜EXがディフェンス重視のバスケットにシフトしていることが大きく、シェリフ自身もフォーカスしているのはディフェンスだ。アウトサイド中心のスコアラーであるアンドリュー・ランダルとマッチアップする機会も多く、シェリフも「すごくIQも高い選手で守りにくい」と評するが、「B2のときに何回かマッチアップしたことがあって、慣れてる部分はあるし、1人というよりチームで守ってるんで、みんなに助けてもらってスローダウンさせることができた」とチームディフェンスの勝利であることを強調した。シェリフが最も意識しているのはチームプレーであり、オフェンスよりもディフェンス。秋田ノーザンハピネッツをディフェンスチームに仕立て上げ、アンゴラ代表をアフリカ予選1試合平均約60失点という成績で今夏のワールドカップ出場に導いたジョゼップ・クラロス・カナルスヘッドコーチのチーム作りにフィットすることが、今のシェリフにとっては重要な仕事だ。
「ペップ(クラロスHC)のバスケットで得点を期待されてるわけではなくて、まずディフェンス。30点40点取っても、たぶん彼にとっては大したことじゃないと思います。ディフェンスができないと試合に出れないので、ディフェンスしながら得点が伸びてるのはうれしいですね。ディフェンスを頑張れば頑張るほどプレータイムをもらえると思うので、これからもオフェンスはあまり気にせず、ディフェンスに集中したいです。ペップとはB2で戦ってきて、そのときから僕のことを見てくれてて、今回呼んでくれたのはうれしいし、自分の能力を見て期待してくれたと思うので、その期待に応えたいです」
沼津中央高の留学生として来日したのが2009年。「全く知らない国だった」というシェリフも、その後日本人と結婚し、日本国籍も取得。既に10年以上の時が過ぎた今は「日本は文化もいいし、人がすごくいい。みんなに言ってるんですけど、日本以外では住めない気がします。たまにセネガルに帰ったりするのがちょっとしんどいなと思うくらい(笑)」と、マインドはもはや完全に日本人だ。