今シーズンのB2プレーオフクォーターファイナルは、4カード中3カードまでが順当に上位シードの連勝という結果に終わった。唯一アップセットが起こったのが、越谷アルファーズと西宮ストークスの顔合わせだ。45勝を挙げ、東地区2位でプレーオフに駒を進めた越谷に対し、西宮は同じ東地区で3位と順位は1つしか変わらないが、29勝止まり。これだけの開きがあれば、越谷が負けることは想像しにくい。
レギュラーシーズンの直接対決は越谷の4勝2敗。西宮は3節のうち2節で第1戦に勝利し、今回の激突も第1戦は71-64で勝利したが、第2戦は73-92で取り返され、勝負は第3戦にもつれ込んだ。越谷は一昨シーズンのプレーオフで第1戦を落とした後に連勝でひっくり返す経験を2度もしており、それらのジンクスからいっても越谷が優位に立っていたはずだった。
しかし、短期決戦の勝負はどう転ぶかわからないものだ。前半は1点差だったものの、第3クォーターは越谷がディフェンスリバウンドから早い切り替えでペイントエリアにボールを飛ばし、アイザック・バッツらが得点。0-11のランを食らい、あっという間に劣勢に立たされた西宮だったが、反撃はここから始まった。残り5分40秒の綱井勇介の3ポイントを皮切りに、アウトサイドシュートで応戦。第3クォーターを終えた時点ではまだ5点差がついていたが、リバウンドで互角以上の勝負ができた第4クォーターも少しずつ点差を縮め、残り3分50秒に逆転すると、その後は一度も追いつかれることなく、最終スコア84-74で会心の逆転劇を演じてみせた。
越谷のジンクスが示すように、2戦先勝方式の短期決戦で1勝1敗になると、第2戦を取ったほうがその勢いで第3戦も制することは往々にしてある。先に勝ったチームが崖っぷちに立たされた心境になってしまうというのも、それが起きてしまう要因の一つだ。
森山知広ヘッドコーチも「バックトゥバック(2日連戦)でもしんどい中で、特にジガ・ディメッツは疲れていたので、3人のコンディション次第かなと思ってました」と、外国籍選手については懸念もあった。ただ、日本人選手に関しては、第2戦が終わった直後から切り替えができていたと証言。平常心を保てたのは、道原紀晃や谷直樹といった百戦錬磨のベテランの存在が生きたようだ。
ただ、いくら選手が落ち着いていたとはいっても、「コートに立ってみないとわからない」(森山HC)のも確か。その中で森山HCは、昨シーズン福島ファイヤーボンズで初めて立ったプレーオフの舞台で、後半に脚が止まって突き放されてしまった経験を踏まえ、選手には「後半が勝負」と伝えていた。0-11というビッグランを浴びても集中力が切れなかったのは、森山HCの声かけを選手たちがしっかり受け止めていたからだろう。
第2戦に敗れた際は、翌日に向けて「自分たちがコントロールできることに集中して、遂行力を上げること。分析して準備したことを選手たちに伝えるだけです」と戦略・戦術面を強く意識していたように見えた森山HCだったが、疲労の色が濃かった外国籍選手に対して「早く声をかけても効果がないかなと思って、試合に出ていく直前に1人ずつ声をかけました」と、メンタル的なアプローチも抜かりなかった。結果、ジョーダン・ハミルトンは22得点を挙げ、トレイ・ポーターはリバウンダーとリムプロテクターの役割を果たし、ディメッツはスタッツには表れなかったもののハードワーカーであり続けた。