思えば昨シーズンも、シャンソン化粧品はレギュラーシーズンを7位で通過し、セミクォーターファイナルでは三菱電機を1点差で撃破して翌日に駒を進めた。今回もトヨタ紡織を破り、クォーターファイナルで再び三菱電機と激突することになったわけだが、今回の三菱電機はレギュラーシーズン3位。開幕週の対戦で1つ勝っているとはいえ、そのときとはチーム状況が大きく異なり、一方の三菱電機はその後富士通とENEOSにいずれも連勝し、レギュラーシーズン1位通過のデンソーからも1勝。間違いなく昨シーズンよりも地力を増した相手に、苦戦を強いられることは予想された。
事実、前半は31-51と20点差をつけられた。後半開始早々に点差は24点まで開き、第3クォーターは知名祐里のこの日唯一の得点となるブザービーター3ポイントで点差を縮めものの、それでもまだ15点差。しかし、シャンソンの選手・スタッフは誰一人諦めていなかった。水野妃奈乃と𠮷田舞衣の3ポイント、イゾジェ ウチェのオフェンスリバウンドなどで、第4クォーター開始3分であっという間に4点差。その後、金田愛奈がファウルアウトとなった残り3分36秒の時点で再び10点差まで開くが、残り1分14秒の小池遥の3ポイントでついに逆転。再度リードを許すも、残り29秒には水野の3本目の3ポイントで再逆転に成功し、最後は相手の反撃を𠮷田のスティールで防いで大逆転勝利が成就した。デンソーを撃破した昨シーズンに続く、セミファイナル進出となったわけである。
この試合は、選手の奮闘はもちろんのことだが、鵜澤潤ヘッドコーチの采配も見事だった。前半のビハインドを挽回すべく、後半は高さを強調したラインアップに変更。それが3ポイントのチャンスメイクにもつながるなど、攻守の好循環を生んだ。4番ポジションで起用されていた金田がファウルアウトした場面では、ガードの知名を投入してスモールラインアップを組み、その知名がスティールやアシストで期待に応え、10点差をひっくり返す一因となった。
ベンチ入りした選手は10人しかおらず、その中にも故障を抱える選手がいる状況下、この試合に出たのは7人だけ。ケガのリスクもあって練習の強度の調整が難しいことを認めつつ、「トレーナーとも話をして、なるべくケガのないように、でも中身が濃いように工夫しながらやってきました。スタッフとは連携が取れてますし、選手もしっかり準備してくれた」と語る鵜澤HCの巧みな起用が、重要な試合で的中した。
「今いるメンバーの中で最善を尽くせるようにいろいろ考えてきたんですが、僕の周りにいる他のスタッフからも提案をもらって、後半は2センターでいきました。20点差を追いかけるには何かを大きく変えないといけないので、良いアイディアだと思ってやってみたら上手くいって、少しずつ自分たちの流れになって、最後は最近やっている4アウトの形で締めくくれました」