JBL時代からの輝かしい戦績を考えると、第9節を終えた時点で9勝7敗という今シーズンの川崎ブレイブサンダースの戦いぶりには、おそらくファンももどかしさを感じているだろう。例年B1は東地区が激戦区と言われ、今シーズンは西地区の上位争いも激化している中で、中地区に関しては川崎が頭一つ抜けているという下馬評が多かった印象があるが、フタを開けてみるとなかなか連勝ができない。天皇杯でも横浜ビー・コルセアーズに敗れ、早くも3連覇の夢は消えた。
開幕早々にマット・ジャニングが戦列を離れ、復帰が遅れていることも影響はあるに違いない。とはいえ、故障者発生の影響を最小限にとどめるのが選手層の厚さであり、その点が川崎の下馬評の高さの理由の一つでもあったはず。ニック・ファジーカスという強力な帰化選手を擁している川崎にとって、たった1人の離脱で思った以上に白星が伸び悩んでいると感じているに違いない。
それでも、 “怪我の功名” とはよく言ったもので、アクシデントがあった際に思いがけぬプラス材料がもたらされることも間々あり、今の川崎でいうとマイケル・ヤングジュニア、鎌田裕也、ファジーカスというラインアップがそれにあたる。内外を器用にこなせるヤングのプレースタイルを生かした形だが、それができるのは鎌田の働きがあってこそ。ジョーダン・ヒースが欠場した11月26日の仙台89ERS戦で、鎌田は25分34秒コートに立って12得点をマーク。翌日はスターター起用されて30分3秒出場した。佐藤賢次ヘッドコーチは、このラインアップに手応えを得ているようだ。
「鎌田自身は、もともとそれだけの力を持っています。それを生かす場面をチームとしてどう作っていくかというところで、なかなかプレータイムを与えられなかったんですが、今マイク(ヤング)のところが良い起点になっていて、彼の強みが生きる形が作れてきている中、仙台戦でJ(ヒース)がいなくて鎌田を使って、それが良い形になって、彼にとっても自信になった。これからもそのラインアップを武器にしていけばチームの力になるなと感じています」
鎌田は第6節までの11試合のうち10試合に出場しているが、打ったシュートはフリースロー2本を除くとわずか4本にすぎず、1本も決めることができなかった。ところが、第7節の仙台との2試合では計8本打って6本成功。以降、鎌田には必ずシュートを打つ機会が訪れ、それを確実に得点に結びつけている。
ヒースが戻ってきても鎌田は10分前後の出場時間を確保し、島根スサノオマジックを破った12月4日の試合も、鎌田は11分18秒の出場で7得点。3ポイント1本を含む3本のフィールドゴールを全て成功させた。試合後、「少しずつ川崎に流れがきたときに出番があったので、相手がどういうディフェンスをしてくるのかを見ながら自分の役割を探してプレーした結果、自分が出た時間帯でリードを奪えて、それは良かったなと思います」と本人が振り返ったように、試合の流れの中でチームを勢いづける役割を見事に果たしてみせた。試合がどう転んでもおかしくない状況であっても、今の鎌田は安心してコートに送り出せるということを証明した試合だった。