今シーズンの移籍市場も大きな動きがあった。広島ドラゴンフライズや島根スサノオマジック、三遠ネオフェニックスなど西地区のクラブがテコ入れしたことにより、東高西低のパワーバランスに変化が見られる予感はあった。蓋を開けてみれば、島根ははじめてチャンピオンシップに進み、アルバルク東京を倒して4強入りの大躍進を遂げた。
その原動力となった安藤誓哉は、ベストトランスファーの最有力候補だった。しかし、それ以上に高い評価を得て、見事にMVP受賞。1選手の複数受賞を避け、多くの選手を称えたいローカルルールがあるため、安藤抜きで再選考に臨む。その結果、琉球ゴールデンキングスのコー・フリッピンが複数票を獲得し、ベストトランスファーに輝いた。
昨シーズンと比較し、ほぼ戦力が変わらない琉球において、惜しまれつつ引退された石崎巧大先生に代わるポイントガードとしてフリッピンを迎える。千葉ジェッツでチャンピオンになった経験と自信を持って、新天地で輝きを増していく。
千葉時代のフリッピンはさほどプレータイムはなく、2020-21レギュラーシーズンは平均9分23秒。大ケガに見舞われて4試合の出場に終わったが、シーズン途中に特別指定で加入した大倉颯太の平均17分33秒よりも少ない。しかし、チャンピオンシップに突入すると、一気にその才能を開花させる。
セミファイナルで千葉は、琉球と対戦。初戦とファイナル進出を決めた第3戦でいずれもフリッピンは11点を挙げ、「ディフェンスでもオフェンスでも貢献してくれた。本当に今日のゲームのキーになってくれた」と大野篤史ヘッドコーチは評価する。
レギュラーシーズン中は10分にも満たない出場時間だったが、チャンピオンシップでは平均15分19秒に増え、比例するように平均6.6点を挙げる活躍で優勝に貢献。フリッピンにとっては、チャンピオンシップの7試合こそがこのシーズンのハイライトとなった。そのインパクトは絶大であり、大きな評価を得て琉球が獲得に動く。
移籍後、シーズン半ばよりスターターとして定着し、プレータイムは20分を超えた。平均7.5点を挙げ、アシストは昨シーズンの平均1.4本から3.2本へと倍増させている。身体能力を活かしたスティールやブロックショットでも数字を伸ばし、ディフェンスからハッスルし、琉球を波に乗せていった。優勝にこそ届かなかったが、関東以西のチームとして初のファイナル進出を果たす。49勝7敗(87.5%)のリーグ史上最高勝率を記録し、大きな躍進を遂げた。過去2シーズンはファイナルで涙をのんだ準優勝チームが翌年にリベンジし、リーグ制覇を成し遂げている。琉球も同じ道をなぞる可能性は高く、熱いブースターにとっては期待しかない。
26歳となったフリッピンは、Bリーグで4シーズン目を迎える。新たな琉球のリーダーとして存在感を発揮すれば、自ずとパフォーマンスも向上し、優勝へ導く大きな原動力となるはずだ。
文 泉誠一
写真 B.LEAGUE
「Basketball Spirits AWARD(BBS AWARD)」は、対象シーズンのバスケットボールシーンを振り返り、バスケットボールスピリッツ編集部とライター陣がまったくの私見と独断、その場のノリと勢いで選出し、表彰しています。選出に当たっては「受賞者が他部門と被らない」ことがルール。できるだけたくさんの選手を表彰してあげたいからなのですが、まあガチガチの賞ではないので肩の力を抜いて「今年、この選手は輝いてたよね」くらいの気持ちで見守ってください。