2018-19シーズンからの2シーズン、Bリーグは外国籍選手を2人までしかベンチ登録できず、どの試合も必ず1人はベンチを外れなければならなかった。外国籍選手にとっては非常に酷なオンザコートルールであり、千葉ジェッツ在籍時にベンチを外れることが多かったトレイ・ジョーンズ(群馬)が今見せている活躍は、そのオンザコートルールが昨シーズンから改められた成果と言ってもいいかもしれない。
そして、そんなオンザコートルールの影響が表れやすいのがシックスマンという役割だ。リーグ本家の表彰では、昨シーズンは橋本拓哉(大阪)だったが、今シーズンはクリストファー・スミス(千葉J)が受賞。外国籍選手をベンチに下げるときに、代わりにコートに立つのも外国籍選手となるのはある意味仕方ないことであり、スミスの受賞は順当な結果と言っていいだろう。このBBS AWARD選考会でも、挙がった名前は外国籍選手のほうが多かった。
ただ、その中でチェイス・フィーラーは他を圧倒するような数字を残したわけではない。レギュラーシーズン1試合平均20.7分の出場で9.2得点、4.5リバウンド。3ポイント成功率も33.6%と、宇都宮にとって大きな武器とまでは言い難い数字だ。シックスマンなんだから得点やリバウンドがさほど多くなくてもしょうがないと思うかもしれないが、外国籍選手にはついつい数字を期待してしまうのもまた一理であるはずだ。
それでも、BBS AWARD選考会は議論がさほど白熱することなく、比較的すんなりとフィーラーに決まった。レギュラーシーズン終了直後に投票が締め切られるリーグ本家と違い、BBS AWARDはB1ファイナル終了後の選考。チャンピオンシップでの活躍も加味されるという点が、フィーラーにとって有利に働いたことは確かだ。とはいえ、シーズンをトータルで振り返ったときに、最も重要なポストシーズンで残したインパクトを無視することはできない。短期決戦は運を味方につけることも時として必要だが、試合数の限られた大舞台で力が発揮できるかどうかという点もチームに、そして選手個々に求められる要素だ。
フィーラーには重要な試合で持てる力を出しきれるマインドが備わっているのではないかと思わせる事実がある。その経歴を調べてみると、プロキャリア1年目はスペイン2部を制し、翌シーズンからはオランダとベルギーで個人4連覇を達成。しかも、オランダでの2シーズン目はプレーオフMVPまで受賞している。実は、フィーラーは優勝請負人だったのである。
川崎ブレイブサンダースを撃破したCSセミファイナルは2試合で30得点を稼ぎ、ファイナルも第1戦で19得点。チームとして、こんな選手がベンチに控えていることは頼もしいことこの上ない。レギュラーシーズンとCSを合わせて57試合に出場し、そのうちの55試合までがベンチスタートだったことも、いかにも根っからのシックスマンというデータだ。
確かにスミスのレギュラーシーズンの活躍はインパクトがあり、リーグ本家で選ばれたことに異論は全くない。ただ、最終的に宇都宮が頂点に立った以上、チームを勝たせるピースという意味においては、最強シックスマンという称号はフィーラーにこそ相応しいのではないか。
文 吉川哲彦
写真 B.LEAGUE
「Basketball Spirits AWARD(BBS AWARD)」は、対象シーズンのバスケットボールシーンを振り返り、バスケットボールスピリッツ編集部とライター陣がまったくの私見と独断、その場のノリと勢いで選出し、表彰しています。選出に当たっては「受賞者が他部門と被らない」ことがルール。できるだけたくさんの選手を表彰してあげたいからなのですが、まあガチガチの賞ではないので肩の力を抜いて「今年、この選手は輝いてたよね」くらいの気持ちで見守ってください。