猛追する山梨を振り切ってつかんだ9勝目
山梨クィーンビーズとの初戦を92-57で圧倒した日立ハイテク クーガーズだったが、2戦目は苦戦する。川崎ブレイブサンダースが逃げ切り、2連覇を達成した天皇杯決勝の展開を思い出す。序盤、9-0で先手を取った山梨。しかし、すぐさま日立ハイテクが13点ランで逆転し、47-28と19点差をつけて前半を終える。
「初戦の後半から山梨のボールに対するプレッシャーがすごく強くなってきていたので、今日は試合の入りからプレスして来ると思っていました。それに対して、しっかりゴールにアタックして行こうという思いで試合に入りました」という先発の村山翠は、前半から9点、4リバウンドをマークし、今シーズン平均(3.76点/2.8リバウンド ※3月13日現在)を上回る活躍を見せる。
しかし第3クォーター、千葉ジェッツが猛追した天皇杯決勝同様、山梨のプレスディフェンスにつかまり、流れが変わる。連続11点を奪った山梨が、55-47と8点差まで追い詰める。「前にいる相手を見ないで、仲間ばかりを見てパスでつなごうとし、それで相手の手にボールが引っかかってしまうことが多かったです」と村山が振り返るとおり、山梨に後半だけで8本(合計11本)もスティールされている。
速攻と、3ポイントシュートを中心に組み立てる山梨のオフェンス。その精度こそ17.9%(5/28本)と低かったが、シュートが落ちても全員でオフェンスリバウンドに飛び込んで執念を見せる。リバウンド総数は44本と4本差で日立ハイテクが上回ったが、山梨にオフェンスリバウンドを18本も取られてしまった。そのリバウンドを自らの役割と課す村山は、谷村の9本に次ぐ7本だったが、「相手に取られてしまったので、そこは反省点です」とプレーオフに向けて目を覚ますきっかけとなる試合となった。試合終盤、谷村里佳と北村悠貴の両エースが得点を重ね、村山も13点目を決めて74-58で逃げ切り、9勝目を挙げた。
敗れた山梨だが、必死にボールを追う “体当たりバスケ” は見る者を魅了する。勝利への執念は、足繁く通うファンにもきっと届いているはずであり、何よりも今シーズンはしっかりと結果に現れている。現在5勝、2012-13シーズンより1リーグ制になって以来の最多勝記録を更新中。残りはまだ4試合もあり、さらなるチャレンジが続く。
谷村&北村以外の底上げにより厚みが増す選手層
試合後、内海知秀ヘッドコーチは開口一番、「昨日もそうだったが、良いところと悪いところが両極端に出てしまった。そこが、チームとしてまだまだなところ」と苦言を呈する。開幕6連勝からスタートしたが、続く上位チームに勝ち星を挙げられないまま12連敗。前節のシャンソン化粧品シャンソンVマジックを1勝1敗で終え、ようやく連敗をストップできた。「上位チームとの対戦では良いところまで行くが、最後に勝ち切れない試合が続いており、まだまだ力が足りない」という内海ヘッドコーチが目指すレベルには到達していない。だが、チームとしての成長も見られている。
「谷村と北村以外の選手の底上げが今シーズンへ向けた課題だった。それが少し良くなってきている」と内海ヘッドコーチは言い、選手層の厚みが増している。佐藤奈々美のケガにより、シャンソン戦に続いて山梨戦も村山が先発で起用された。ケガや女子日本代表活動で谷村がチームを離れていた時期こそ、まわりの選手が成長するチャンスとして村山は捉えていた。