年明け早々に行われたWリーグ第9週を終えた時点で、唯一全勝を守ってリーグ首位を走る富士通レッドウェーブ。東京オリンピック銀メダリストの町田瑠唯と宮澤夕貴、オコエ桃仁花に加えて3×3の篠崎澪とオリンピアンを4人揃えていることを考えると、この成績も全く不思議ではない。ENEOSから宮澤と中村優花を迎えたことで、選手個々の経験値の高さという点も他の強豪に引けを取らないレベルになった。先に開催された第88回皇后杯ファイナルラウンドでは、準々決勝で昨シーズンのリーグ覇者であるトヨタ自動車を破り、その地力を証明してみせている。
実績で群を抜くENEOSやタレント集団のトヨタ自動車、リオ五輪も含めると富士通と同様に4人のオリンピアンを抱えるデンソーなどとの争いは、ここから苛烈を極めていくことになるだろう。そのカギとなるのはベンチメンバーの底上げ。セカンドユニットがスターターと遜色ない働きを見せるようになれば、富士通の地力はより強固なものになるだろう。
第9週(1月1、2日)の山梨クィーンビーズ戦はスターターの宮澤と内尾聡菜が欠場し、2日については田中真美子も欠場したが、その2日に効率の良い仕事ぶりを披露したのが藤本愛妃だ。第2クォーター残り8分19秒に投入された藤本は、その10秒後にオフェンスリバウンドに飛び込んでそのままゴール下のシュートを決め、さらにその約1分後にはコーナーからロング2ポイントも沈めてみせた。勢いに乗った富士通はさらに5点を重ね、第2クォーター最初の町田の3ポイントも合わせて連続12得点で山梨を一気に突き放した。
藤本はこの試合、出場は8分39秒とさほど長くはなかったが8得点4リバウンド。富士通の開幕16連勝達成に十分貢献したと言える数字であり、藤本自身も「もう少しできたかなとは思うんですけど、与えられたプレータイムの中ではできたほうなのではないかと思います」と合格点をつけた。
藤本が特に意識しているのは、チームの課題であるリバウンド。この試合もベンチで見ていて「リバウンドが取れていない」と感じていた藤本は「リバウンドを頑張ろうという考えだけでコートに入りました」と言い、「ベンチプレーヤーは1本1本のプレーにかかっているし、BT(テーブスヘッドコーチ)からも『どれだけ短い時間だとしても結果を残してこい』と言われているので、何かしら自分ができることで貢献したいと考えたときに、やっぱりリバウンドなのかなと思っています」と常日頃から自身の役割を見定めているそうだ。コートインからわずか10秒で訪れたリバウンドのチャンスをしっかりとものにしたのは、その意識の高さの表れと言えるだろう。