最近、とある事情から「競争」について考えることが多い。
そんななかでおこなわれた「男子バスケットボール日本代表 国際強化試合2021」は、改めて男子日本代表の「競争」を知る貴重な機会となった。
それを語る前に、ざっくりと大会を振り返っておこう。
宮城県でおこなわれた第1戦は85-57で快勝。コンディションの上がらないイランだったとはいえ、強度の高いディフェンスを遂行し、勝つべき試合に勝ったことは、日本のレベルが上がってきている証拠である。
一方で、岩手でおこなわれた第2戦は、日本の弱点がそう簡単に克服できるものではないのだなと、改めて思わされる試合だった。67-72で惜敗。相手のフィジカルコンタクトに苦しみ、ターンオーバーを連発。3ポイントシュートが効果的に決まらなかったことも、日本のリズムを作りきれない大きな敗因だった。
76-50でイランを退けた第3戦は、初戦の収穫と、第2戦の反省をうまく融合させていた。
今大会はNBA組(八村塁と渡邊雄太)、オーストラリア・NBLで戦う馬場雄大を除く15名から、毎試合12名を選出して戦う形が採られていた。
東京オリンピックの最終メンバー枠も12名。八村ら3人が加わると、18名から12名、つまり6名が落選することになる。
直前に、日本代表の精神的支柱とも思われた篠山竜青が外れたことも、残された選手たちに大きな危機感を与えたに違いない。
文字どおりのサバイバルゲーム。そこを勝ち抜くのは誰か。
試合の勝敗もさることながら、そんなところにも目を向けたくなる大会だった。
フリオ・ラマスヘッドコーチはJOCからの依頼を受け「7月4日(まで?)に次のカットを決める」と言っていたが、おもしろいなと思ったのは最終戦の記者会見に登壇した2人の選手、張本天傑と金丸晃輔の発言だった。
「競争もあるが、僕自身はその競争のなかで、短期間にいかに成長できるかを、一番のメインに置いている」
張本がそう言えば、金丸もこう言っている。
「競争はあまり意識していない。チームが勝つことを大前提としたなかで、代表で求められること、僕の役割をしっかりとこなして、数字を残すことだけに集中しています」
一生に一度あるかどうかの自国開催のオリンピック。
初戦の記者会見に登壇した安藤周人が「何としても残らないと」と意気込んでいただけに、全員にもっとバチバチした戦いが、合宿中から繰り広げられているのかと思っていた。
しかし張本も金丸も、もちろん選出されることを望んではいるのだろうが、そこまで熱くなっていないところがおもしろい。
高いレベルでの合宿や試合を通して成長し、やるべきことをやっていれば、おのずと結果はついてくるという自信だろうか。