今オフの移籍市場が賑わいを見せている。スピリッツ・アウォード選考会でも、その話題が尽きなかった。Wリーグでは弊アウォードMVPに輝いた馬瓜エブリンが、一時は自由契約選手リストにその名が掲載された。その後に再契約を果たし、さらにトヨタ自動車アンテロープスは他チームの有望な選手を多く迎え入れ、2連覇に向けた見通しは明るい。王座奪還を目指すENEOSサンフラワーズだが、宮澤夕貴と中村優花が富士通レッドウェーブへ移籍してしまった。渡嘉敷来夢はこの原稿を書いている時点(6月9日)でも、いまだに自由契約選手リスト上にある。
昨今はWリーグの移籍市場も活性化しており、ベストトランスファーも頭を悩ます。その中において、シャンソン化粧品 Vマジックから日立ハイテククーガーズへ移籍した谷村里佳が受賞した。トヨタ紡織サンシャインラビッツから同じく日立ハイテクに移籍した佐藤奈々美の名前も挙がったが、ベスト5に選出。1人1賞に制限しつつ、多くの選手に受賞機会を与えたい弊アウォードゆえに、ノミネートから除外された。
レギュラーシーズン平均20点、10.62リバウンドはともにリーグ2位を記録し、キャリアハイを更新した谷村の活躍をここに称える。日立ハイテクはコロナの陽性者が出たことで最後は失速し、東地区3位(リーグ全体7位タイ)に終わった。しかし、プレーオフ圏外(9位)だった昨シーズンと比較すれば、首位争いをするチームへと飛躍させ、その中心にいた谷村の活躍は移籍が成功した証でもある。
Bリーグのベストトランスファーは、滋賀レイクスターズから名古屋ダイヤモンドドルフィンズへ移籍した齋藤拓実に決まった。対抗として、候補に挙がったのは横浜ビー・コルセアーズの森川正明だ。シーホース三河時代と比較し、プレータイムは3倍、得点も倍増させたがチームを勝たせきれなかったことで残念ながら落選。横浜を上昇させる来シーズンの活躍を期待している。
滋賀から三河へ移籍し、スタッツを伸ばしたシェーファー アヴィ幸樹は、もちろん真っ先にその名が挙がった。しかし、1人1賞の制限に準じ、外国籍選手を相手にインサイドで存在感を示したシェーファーは、ベスト5に選出された。
ベストトランスファーを受賞した齋藤は平均12.5点、5.7アシストと昨シーズンと変わらぬ活躍を見せ、チャンピオンシップまであと一歩に迫る。3位の三河と2.5ゲーム差で逃した悔しさは、来シーズンへ向けた発奮材料となるはずだ。滋賀でバスケの基礎を叩き込まれた恩師であるショーン・デニスヘッドコーチの就任が決まり、来シーズンは師弟コンビ復活となる。滋賀でも、名古屋Dでも届かなかったチャンピオンシップ進出を、来シーズンこそ“LITTLE GUY”が叶えてくれるはずだ。
現時点でもエース級の選手が移籍するニュースに驚かされているが、まだまだ氷山の一角にすぎないかもしれない。今後も大きな移籍がありそうな噂は耳に入ってきている。移籍市場が活性化することで、このベストトランスファーの意義や意味合いが大きくなり、来シーズンの選考が今から楽しみである。
日立ハイテククーガーズ #11 谷村里佳
これまでの私がこれからの私を輝かせる
https://bbspirits.com/wleague/w20102701/
名古屋ダイヤモンドドルフィンズ #2 齋藤拓実
今シーズンの目標は「チームを勝たせることです」
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文 泉誠一
写真 B.LEAGUE・W LEAGUE