ジェフ・ギブスが日本にやって来たのは2010年。トヨタ自動車アルバルク(現アルバルク東京)に6年間所属し、JBL2012年-2013年シーズン、NBL2015年-2016年シーズンにはリーグベスト5に選出されている。コートに立つ彼を初めて見たとき、その強靭な身体に目を見張った。敵を蹴散らしインサイドに切れ込み、持ち前の跳躍力と長いリーチでリバウンドをもぎ取る。188cmでありながら2mクラスの外国籍選手たちをものともしない姿は、まるで『パワーと機動力を兼ね備えた戦車』のように見えた。
あれから10年。宇都宮ブレックスに移籍して5年目のシーズンを迎えるギブスはチーム最年長の40歳。だが、勝利へ牽引する力強いパフォーマンスは今なお健在だ。
アメリカンフットボールで培ったパワー
── まずお聞きしたいのは188cmのギブスさんがなぜインサイドであれほどのパフォーマンスを発揮できるか?ということです。
要素としては2つあると思います。1つは子どものころから大学までバスケットと並行して続けていたアメリカンフットボール。正直に言えば私はバスケットのプロ選手になることよりアメフトの選手としてNFLでプレーすることを目指していました。が、トライアウトを受けた際、「希望するポジションでプレーするには君の身長は足りない」と言われ(NFLへの道は)あきらめざるを得なくなったんです。ただアメフトで培ってきた『力で相手を圧倒する』部分はバスケットをやる上で私のストロングポイントになりました。もう1つの要素は子どものころからあこがれていたチャールズ・バークレーの存在です。彼もまた特別サイズがある選手ではありませんが、フィジカルの強さを生かしてすばらしいパフォーマンスを見せてくれる選手であり、私の理想、私のモデルとなる選手でした。アメフトで培った強い身体とバークレーという自分が目指す選手がいたこと。この2つの要素が今の私のプレースタイルにつながったと思っています。
── バスケットのプロ選手としてのキャリアはドイツでスタートされたと聞きました。
そうです。ドイツのトップリーグで6年プレーしました。
── アメリカからドイツに渡られた経緯は?
これはたまたまというか。ラッキーだったんです。ドイツのトップチームが管轄する高校生カテゴリーのチームと試合をする機会があって、そこでトップチームの方のコーチが私のプレーに興味を持ってくれたんですね。ちょうどアメリカ人の選手を探していたらしく声をかけてもらいました。ほんとに偶然が生んだ幸運という感じです。
── その後に日本にいらしたわけですが、日本の第一印象は?
日本には他人をリスペクトする文化がありますね。他人にもやさしく接する国民性のようなものを強く感じました。それは1つのカルチャーショックだったし、今でも私が大好きなところです。