part2「『元気』を買われて大学選抜から日本代表へ」より続く
どんなチームもトップが変われば雰囲気も変わる。小浜元孝(故人)が監督に就任した日本代表チームには細かい決まり事が増えた。食事のときは全員白のポロシャツと紺のパンツを着用。食事中は無駄話をしない。スープは音を立てずに飲め。試合後、「今日はおまえで負けた」と何度も言われた陸川は、そのたびに「いつか絶対お前で勝ったと言わせてみせる」と闘志を燃やした。公私ともに厳しい監督。が、同じころ、小浜は陸川についてこんなコメントを残している。「常に全力でプレーする姿勢も明るい性格もチームにいい影響を与えている。あいつを見ているとなんだか楽しくなってくるんですよ」──
1番下手な選手として自分がやるべきことはわかっていた
── キャリア5年で選出された日本代表、文字通り日本のトップチームですから緊張する部分もあったのではないですか?
そうですね。最初に練習に参加したときの感想は「やっぱりみんな巧いなあ」でした。でも、その中で自分が1番下手なことはわかっていますし、できることも決まっています。走って、声出して、ハッスルして、集中して、気持ちでは決して負けない。それだけは絶対貫こうと思っていました。先輩たちはとてもやさしくて、宿舎では北原(憲彦)さんと岡山(恭崇)さんと同室になったんですが、ノンストップでしゃべる北原さんの話がめっちゃおもしろくて笑いっぱなしでした。岡山さんもすごく面倒見のいい人で細かな心配りをしてくれる。おかげですんなりチームになじむことができました。
── 思い出深い試合を教えてください。
忘れられない試合は3つあります。まず1つ目は代表メンバーとして最初に出たフランス戦。残り3分で25点負けていました。25点負けているから出させてもらえたと思うんですが、私は張り切っていました(笑)。岡山さんがリバウンドを取った瞬間にバーッと走って、ロングパスを受けてシュート。それを2本連続で決めたんです。試合は負けましたが、ホテルに帰ってテレビを付けたらNHKのスポーツニュースに私のレイアップシーンが映っていて「陸川の活躍もむなしく…」と言っていた。もうびっくりですよ。ほんとにびっくり!でも、びっくりしながら新たな闘志が沸いてくるのを感じました。