常にゴールを狙うポイントガードとして
才能を見出されるとはこういうことを言うのだろう。
2018年春、本橋菜子は思わぬ一報を受けた。女子日本代表の候補に入ったというのである。驚きを隠せなかった。と同時に、52人いる候補の一人に過ぎないのだろう、Wリーグの各チームから最低でも1人、そんな人数合わせのために呼ばれたのだろう。そんな冷めた思いも頭に浮かんだ。しかし ──
本橋はその年の最終メンバーに残った。12人だけの狭き門を潜り抜けたのである。それだけではない。9月にスペインでおこなわれたワールドカップでは、全試合でスタメンのポイントガードとして起用されている。翌2019年9月におこなわれた、本橋にとって初となるアジアカップではチームの4連覇に貢献し、大会MVPにも選出されている。さらに11月、マレーシアでおこなわれた東京オリンピック世界予選のプレ予選(プレOQT)では、チームの“顔”として、文字どおり本橋の写真が大会ボードや会場内の柱に貼り出されていた。驚きの一報から、たった2年のことである。
そして2020年2月、ベルギー・オステンドで開催された東京オリンピック世界予選に出場する女子日本代表の最終メンバーリストにも彼女の名前はあった。もはやそれが当たり前であるかのように、本橋は女子日本代表に欠かせないポイントガードのひとりになっている。
女子日本代表のトム・ホーバスヘッドコーチが見出した彼女の魅力、それは得点力だ。
日本のポイントガードは、どちらかといえばゲームメーカー的な存在が多かった。吉田亜沙美にしても、町田瑠唯にしても、藤岡麻菜美にしても。あの大神雄子でさえ、ポイントガードとして起用されたときは自身の得点よりもゲームメークのほうに重心を傾けていた。
だが本橋は違う。「常に攻める意識を持って、チャンスがあれば積極的にアタックする」ことを大切にしているポイントガードだ。
「元々攻めるのが好きだったということもありますし、どこからでも得点が取れるというのは相手に取って脅威だと思うんです。だからチャンスがあったら誰にでも平等に攻めるチャンスがあっていいんじゃないかと思って、やっています」
世界的なトレンドでもある。しかし本橋の才能に時代が追いついたとも受け取れなくはない。