part2「タフな戦いだからこそ充実した日々がある。」 より続く
今シーズンのサンロッカーズ渋谷(以下、SR渋谷)の好調を支えるセバスチャン・サイズ。彼がバスケットを本格的に始めたのは15歳のときだという。日本の感覚でいえば、やや遅い気もするが、高校から ── つまりは本格的に始めてすぐ ── アメリカに渡り、そこで磨かれた彼自身が持つ身体能力とスキルが今、Bリーグでプレーできる礎になっている。
「ボクがまだ学生だった頃によく見ていて、覚えているのはアマレ・スタウダマイアーやスティーブ・ナッシュがいたときのフェニックス・サンズだね。トロント・ラプターズにいたクリス・ボッシュも見ていたよ。やはり同じポジションをプレーしている選手を見ていたと思う。それ以外には数年前にミルウォーキー・バックスでプレーしていて、NBAに行く前はスペインリーグのバスコニアでもプレーしたミルザ・テレトビッチ(ボスニア・ヘルツェゴヴィナ)。そのころのミルウォーキーはルイス・スコラなどほかにも素晴らしい選手がそろっていたんだけど、テレトビッチは何でもできる、グレートプレーヤーのひとりだった。もちろんスペインのなかにもあこがれていた選手はいて、ガソル兄弟がそうだったよ。そうした選手たちがボクにとっての一番大きなアイドルだったんだ」
サイズがあって、それでいてペイントエリア内だけでなく、アウトサイドでもプレーする選手にあこがれていたセバスチャン。ただ彼は、プレーそのものもお手本にしていたが、それ以外の視点をも持って、あこがれの選手たちを見つめていたと言う。
「彼らがどういう動きをしているのかだけじゃなく、そこに至るまでにどんなことをしているのかも手本にして、自分がそれをできるようになるにはどうしたらいいのかを考えてやってきたんだ」
スタートは、もしかしたらスペイン人のなかでも遅いほうなのかもしれない。上達の第一歩は真似をすることと言われるが、セバスチャンはそのスタートの遅さを、単にプレーそのものの真似だけではなく、そのもうひとつ前、つまりそのプレーに至るまでの動きも見ることで急速に力をつけてきたのだろう。これはプロを夢見る今の学生たちにとっても大きな勇気と、上達に向けたヒントを与えることになりそうだ。