手薄なポイントガードに不安を抱える女王JX-ENEOSサンフラワーズ
「悔しいぃ~~。最初に会見するのはヤダァー」という大きな声が、メディア陣が待つ部屋に聴こえてきた。その直後に姿を現したその声の主は、JX-ENEOSサンフラワーズの渡嘉敷来夢である。通常、記者会見は敗者から先に行われる。それを知っていた渡嘉敷は、その屈辱が許せなかった。11連覇中のJX-ENEOSが富士通レッドウェーブに56-61で敗れる。開幕戦を落としたのは2014-15シーズンにトヨタ自動車アンテロープスに敗れた以来、5年ぶりのことだ。11連覇中に同じことが起きたのは3度しかない。
今シーズンより新たに常勝軍団を率いる梅嵜英毅ヘッドコーチは、「富士通のディフェンスの寄りが早かったことに対し、ボールが少し動かなくなり、相手に走られてしまった。大きく挙げればディフェンスとピックアップする部分と、自分たちのオフェンスでボールが動かなくなってスペースがなくなったのが一番の敗因。JXにとって56点はけっして良い点数ではない。その反省を踏まえて、明日はこれにプラスして30点くらい獲れるようにしたい」と反省し、同時に巻き返しを誓った。
開幕前に吉田亜沙美選手の現役復帰(引退撤回?)の朗報が届く。藤岡麻菜美が足を怪我しており、開幕戦から先発することも期待された。「まだ時間が足りなく、本人もまだ100%まで来ていないという部分があり、もう少し時間がかかる」と梅嵜ヘッドコーチは明かす。手薄なポイントガードの中、先発で起用されたのが、6年目の宮崎早織であり、14分間出場。残る26分間、ゲームコントロールを託されたのはルーキーの高田静だった。5アシスト、4点は上々のデビュー戦と言える。
「最初から宮崎と高田で勝負しようと決めていた。今日の試合はディフェンスでスイッチしたときに高田の方が、身体が強い部分があり、そのために長くなったかな」という梅嵜ヘッドコーチは、対戦相手や試合状況により2人の起用を変えていくそうだ。幸い、11月は日本代表活動があることでWリーグは丸々1ヶ月間試合がない。12月のリーグ再開を目処に吉田と藤岡の復帰を計算しながら、10月はこの二人で乗り切るとともに成長を促していく。4人いるガード陣の「誰が出ても良いような状況に作り上げたい」(梅嵜ヘッドコーチ)。
吉田自身、コンディションは「まだ半分も戻ってきていない」状況だ。「明日も試合があるし、出るかも知れない……それは分からないけど、スタッフと話し合いながら、身体とも向き合いながらになる。1日でも早く戻ってくるようにしたい」と完全復帰が待たれる。