※本記事はバスケットボールスピリッツのWEB化に伴う、2018年2月末発行vol.18からの転載
デンソーアイリスは1月28日、今シーズンのプレーオフ進出を決めた。自身の勝利とともに、下位に低迷しているチームの敗戦が相まっての結果だが、レギュラーシーズンの3分の2を終えた時点で17勝5敗、リーグ3位の成績は堂々たるものである。
「個人的な見方としては、負けた試合の中にも勝てた試合があったし、逆に勝った試合で負けてもおかしくない試合もあったので、順調と言えば順調ですけど、最低ラインかなと思います」
現状をそう振り返るのは、チーム在籍10年目となるキャプテンの髙田真希だ。髙田はチームの目標がリーグ優勝である以上、負けていてはいけないゲームがあったと厳しく追及しながらも、一方でチームの状況を考えるとその成績は最低限残しておかなければいけない数字だったとも認める。
チームの状況とは、昨シーズンから3人の選手が抜け、新人が7人も入ってきたことだ。7人の新人加入はリーグ全体を見渡しても異例と言っていい。しかも選手15名のうち約半分にあたる7人の新人以外にも、3年目が2人、4年目が1人という、なんとも若いチームなのである。
そんな若いチームが、日本代表の髙田がいるとはいえ、早々にプレーオフ進出を決めたことはチームとしてのケミストリーが高まっている証拠でもある。
「今シーズンが始まったときは新人の多いことが不安要素になるかなと思っていました。でも若い子たちは一人ひとりの能力が高いし、練習や試合を積み重ねていくことでできることも多くなってきました。リーグで試合を重ねていくごとに不安も解消されていきましたね」
経験の少ない、若い選手が多いこともあって小嶋裕二三ヘッドコーチもバスケットスタイルに多少のテコ入れをしたようだ。それが今のチームにフィットしていると髙田は認める。また女子バスケット界全体に浸透する速い展開のバスケットもできるようになり、若手のみならず、中堅、ベテランを含めた個々の能力がそれに合致するようになってきた。当初不安要素だと思われていた7人の新人が触媒となって、デンソーによい化学反応を引き起こしたわけである。
チームを変えるために自分が変わる
化学反応はむろん髙田自身にも引き起こされている。それはプレースタイルの変化というよりも、彼女のキャプテンシー、リーダーシップに表れている。彼女自身も認めるとおり、彼女はそれらを率先してやるタイプではなかった。むしろリーダーの声を聞き、それを淡々と、飄々とやっていくタイプだった。今も「できればやりたくないです」と笑うが、それが勝つために必要なことであればやるしかない。髙田はそう信じている。
「キャプテンだし、チームに一番長く在籍しているからやらなきゃいけないというのもあるんですけど、変わろうと思った一番の理由は、ダメなときに1試合ダメなままで終わったり、踏ん張らなきゃいけないときに自分が踏ん張りきれずに負けたことが何度もあったことなんです。そこで誰かが声をかけて、少しでもチームが変わるのであれば、自分がやろうと思ったんです」