関東1位、第1シードの早稲田大学が初戦を迎え、東北2位の仙台大学を100-65で破って快勝した。平均身長170.7cmの早稲田大学に対し、最高身長が171cmの仙台大学は小さなチームである。「あの確率で決められてしまったらどうしようもない」と菅野恵子ヘッドコーチが敗因に挙げたのは身長差ではなく、11本を許した早稲田大学の3Pシュートだった。
高さに対するディフェンスに関しては、「できていたと思います」と及第点を与えた菅野ヘッドコーチ。60本ものリバウンドを獲られたが、小さな仙台大学も46本を奪って対抗する。高さで適わなくても、次々と床に身体を投げ出し、ルーズボールに飛び込んで行く。持てる力は出し尽くした。4年生の#18清水理香子選手は、清々しい表情でこの試合を振り返る。
「早稲田大学に比べれば身長は小さいですが、その中で何ができるかを考えて厳しい練習をしてきました。それを今まで以上に出すことはできました。結果は伴わなかったですが、今やれることを出すことはでき、悔いなく終われたと思います」
昨年、地元仙台で行われたインカレで3年ぶりに全国の舞台に返り咲く。1回戦で白鷗大学と対戦し、第1クォーターは24-17とリードを奪う。しかし、アジャストされたその後に点差を開かれて66-92で敗れた。全国区の力を肌で感じられたからこそ、今年はインカレで勝つための強化を行ってきた。「早稲田は頂点を見ているので、第1クォーターは競ることはできるかもしれない。アジャストしてくる第2クォーターが勝負」と菅野ヘッドコーチは考え、当初は相手の攻撃回数を減らすためにスローダウンさせる作戦だった。しかし第1クォーターで思いのほかオフェンスが通用し、10分を終えた時点で20-26、6点ビハインドだった。そうなると第2クォーターの選択肢が増える。悩む菅野ヘッドコーチは選手たちの勢いに懸け、「そのまま行こう」と決断する。
だが、さすがは早稲田大学である。第2クォーターにディフェンスで対応されると、得点が止まってしまう。強い気持ちで向かって行った序盤には感じなかった相手の高さが脅威となり、「逃げ腰になってしまった」。30-53、前半を終えて23点差をつけられ、清水選手は3つ目のファウルを犯してもいた。やはり、第2クォーターが勝負だった。「抑えるか、行かせるかを悩んだのですが、後者を選んだのは申し訳なかったです」と菅野ヘッドコーチは悔やんでいたが、それもこの舞台に立たなければ経験できない。
清水選手は東北リーグの得点王であり、3Pシュート王にも輝いたポイントゲッターだ。早稲田大学ベンチからは「シューターのところを抑えるように」と警戒され、その声は彼女の耳にも届いていた。「どれだけ自分の力が通用するか」「どれだけチームに貢献できるか」を考えながら挑んでいく。結果は13点を挙げたが、19本放った3Pシュートは3本しかネットを揺らすことができなかった。「積極的にシュートは打ちましたが身長が小さい分、打ちづらかったです。成果は出し切れませんでした」とその差を痛感する。164cmの清水選手にマッチアップする#37内山美悠選手(3年)とは173cmと、同じポジションでも10cm近い身長差があった。
明成高校出身の清水選手だが、昨年のインカレがはじめての全国大会だった。早稲田大学との対戦が決まった後から、菅野ヘッドコーチも活躍した山形銀行を相手に練習を重ねる。昨年の経験を生かし、小さいことを長所と捉え、走るバスケをモットーに意識を変えた。相手は早稲田大学だが、昨年の自分たちとの戦いでもあった。「相手に決められても切り返しを早くすること。自分たちがシュートを決めれば前から当たること。小さい部分を生かして戦って行くことが、昨年から大きく変わった点です」と少なからず手応えを感じることができた。
2年連続出場を果たした仙台大学だが、全国との差を知ることができるのはインカレしかない。残った後輩たちは今年得た課題を克服するためにさらなる強化を続け、3度、4度とこの舞台に帰ってくることで、その経験値を分厚くできる。来年の4年生もまた、清水選手と同じ気持ちで引退して欲しいと願う。
「大学ではじめて全国を経験できたことは自分にとって良い財産になりました」
文・写真 泉 誠一