10月27日(土)、19勝目(現在20連勝中)を挙げた日本体育大学が、残り3試合を残して関東大学リーグ2部優勝を決めた。今シーズンより12チームに拡大したため、1部下位2チームと2部上位2チームは自動入れ替えとなる。日本体育大学にとっては、2012年以来となる1部で戦う権利を得た。
106-79で上武大学に快勝して優勝を決めたが、歓喜の輪はできなかった。いつも通りに円陣を組んだあと、すぐさまクールダウンに入り、翌日に続く埼玉工業大学戦(87-54で勝利)に備える。この試合で29点を挙げた#3大浦颯太選手(3年)は「内心みんなも喜んでいると思います」と言ったが、日本体育大学が掲げた目標は4つあり、まだコンプリートできていない。
『1部昇格』『インカレ出場権獲得』『2部で1位』の3つは、この試合を終えた時点ですでに達成された。もう一つ、『全勝優勝』を成し遂げなければ、真の喜びを味わうことはない。歓喜の瞬間は、このまま行けば11月4日(日)に青山学院大学相模原キャンパスで行われる最終戦が終わった後になる。
選手自身が方向性を決め、目標を立てたことで言い訳できない状況づくり
昨年、すでに1部昇格を決めていた中央大学との最終戦。その試合に勝てば、日本体育大学も昇格できたが悔しい結果に終わったため、今年も2部に甘んじている。新シーズンを迎えるにあたり、藤田将弘ヘッドコーチはスピードを生かした速いオフェンスへのスタイル変更を選手たちに打診する。ヘッドコーチがトップダウンで課すのではなく、「選手自身が決めたことで言い訳ができない」状況を作る狙いがあった。
大浦選手はその取り組みについて、こう話している。
「井手(優希/4年#64)キャプテンや学生コーチらとともに、どのような練習をすれば良いかなどいろんな話し合いをしながら、目標を立てました。その目標に向かって実行しなければならず、また目標を掲げたおかげで選手同士が注意し合えるようになったことが大きく、練習中から成長できるようになりました」
藤田ヘッドコーチは、「選手たちで決めたゴールに向かって突き進んでいったことが、今の結果の原動力になっています。自主性を持って臨めていることが大きいです」と言い、コート内外で大きな変化を起こしたことが功を奏した。上武大学戦はインサイドの4人(フェイ・ヌダリー選手、河野佑太選手、津田晟多郎選手、バム ジョナサン選手)をケガで欠く状況だった。「スタイルを変えることなく、誰が出ても同じバスケットができています。スピードを突き詰めた自分たちのバスケットを表現してくれました」と藤田ヘッドコーチは選手たちを労い、チーム全員で窮地を乗り切ることができた。チームワークこそが武器であり、「ケガ人がいる中でもみんなで協力して勝てたことも大きな1勝でした」と大浦選手は自ら選んだスタイルに確信を得ている。
インカレで1部に挑戦する日本体育大学──その裏で繰り広げている1部残留争い
全勝優勝まであと2勝に迫っているが、まだ気を緩めることはできない。3年ぶりとなるインカレへ向け、残るリーグ戦を通してさらなる成長が不可欠でもある。そのインカレでは「来年も残る僕らが、今後どう戦っていくかを試される場だと思っています。新たな成長ができるように、これまでと同じようにみんなで話し合って、協力して戦っていきたいです」と大浦選手は話しており、さらに高い目標へ向かってギアを上げた。
藤田ヘッドコーチは、来年へ向けたステップアップをすでにイメージしていた。
「良いバスケットをたくさん見せたい。海外の大学やNBA、Bリーグもそうだが、もっと良いバスケットをたくさん見せて、良いイメージを持たせたいです。身長が伸びる可能性は低く、飛躍的に体を大きくしても動けなくなる可能性もあります。来年に向けて、彼らの頭の部分を作っていきたいです」
バスケIQを高めるための第一歩となるのは、己の実力を知ること。そのためにも2部全勝優勝を果たし、インカレでは自信を持って1部のチームにぶつかっていくことで、来年に向けた課題も明確になるはずだ。
その1部は、トップに立つ東海大学(17勝3敗)が抜け始めている。台風の影響により、試合数の足並みが揃っていない状況だが、それも今週末で解消される。昨年の優勝校である拓殖大学が3勝17敗で最下位におり、残念ながら2部降格が確定してしまった。5勝14敗の中央大学は1試合少なく、今週末の結果次第では6勝14敗の明治大学と神奈川大学に並ぶことができる。いずれも1部残留を懸け、1勝も落とせないギリギリの戦いが続く。
文・写真 泉 誠一