「女子は可能性が十分にある。世界の2位〜12位は(順位ほどの)差はない」(大神)
── お二人はWNBAを含め、世界のバスケットに精通していると思います。萩原さんはアンダーカテゴリーのヘッドコーチだし、大神さんも今シーズン終了後に女子のロシアリーグを観戦しに行ったと聞きました。今の世界はどんな状況で、日本はそのなかでどのような位置にいますか?
萩原 女子に関していえばそれほど差はないと感じています。戦えない相手ではなくなってきているなと思います。これはアンダーカテゴリーも一緒で、バスケットの中身は違うところもあるんですけど、私たちが現役だったころは世界選手権に行っても16位とか、そのあたりだったから、そのころに比べると今はトップ10に入ってこられるようになってきているし、世界はだいぶん近づいてきていると思います。
大神 自分もそれをすごく感じます。本当に女子は可能性が十分にあると思います。正直に言えばアメリカは頭抜けていると思いますが、2位から、それこそオリンピックに出るなら12チームだから、2位から12位は(順位ほどの)差はないのかなと思います。
萩原 そうだね。
大神 よければ2位だし、でももしかすると12位の可能性もあるというくらい、アメリカ以外の(トップ)チームは拮抗しているのかなって。
萩原 それはそうね。
── 日本のどこに、かつてはあった差を縮める要因があるのでしょう?
萩原 たぶん2つあって、1つは人材、つまり選手がいるってこと。間違いなく渡嘉敷来夢の存在は、今の女子日本代表にとって絶対的に大きいんですよ。ただ何となくだけど、渡嘉敷レベルとまではいかないまでも、ちょっとずつ体は大きくなってきていると思うんです。今は180センチ台前半の選手がオールラウンドにプレーできる。そのあたりが変わってきているのかなって。もう1つは、今日のテーマにもつながるんですけど、女子はアトランタに出て、その次のシドニー(2000年)は逃しているけど、その次のアテネ(2004年)に行って、北京やロンドンは逃しているけど、ずっとOQT(世界最終予選)で世界の扉を叩き続けている。そして一昨年のリオデジャネイロでしょ。つまり女子は世界に出るのが当たり前みたいになってきている。そこはすごく大きいと思います。
大神 うん、うん。
── 勝てないまでも世界を知るというか、ノックし続けていることが世界との差を縮める要素になっていると。
萩原 そう。北京とロンドンは結果として出られなかったけど、OQTを戦った8年間というのはすごく大きな意味があって、シンたちがトライして、トライして、トライして、最後の最後でダメでという……北京のときは私もアシスタントコーチとして女子日本代表に入っていたんだけど、あれは大きいですよね。あれがあるから今があると思っています。
大神 今、オーさんに言ってもらったことで振り返ると、確かに2008年のOQTでは最後の1枠を争う前の試合、実質的な準決勝でキューバとギリギリの戦いをしたり、私にとって最後となった2012年のOQTでは、それこそ最後の1枠を争う決勝戦でやはりカナダとギリギリの戦いまで持ち込むことができたっていうのは、日本が世界で戦うのは当たり前になってきている証拠というか、あと一歩のところなんだって思えるんですよね。それこそ当時“ドペーペー”だった選手たちが今の日本代表の主力なんです。リュウ(吉田亜沙美)もそうだけど、今の女子日本代表の主力クラスがあのOQTで負けを経験していることを考えると、やっぱり「負けから勝っていく」んだな、あの8年は大きかったんだなって思います。もちろんバスケットスタイルもタク(渡嘉敷)が入ったことで変わったし、最近では宮澤(夕貴)や長岡(萌映子)、馬瓜(エブリン)など、身長が180センチ台でフォワードのできる選手が増えましたよね。
萩原 (赤穂)ひまわりとかね。
大神 そう。あの8年間にも藤吉(佐緒里)など身長が大きくてフォワードのできる選手はいたんですけど、間違いなく今のほうが大きいですよね。そう考えると、渡嘉敷もそうだけど、3番ポジションと4番ポジション……「ストレッチ4(フォー)」を含めて、そのポジションをプレーできる選手が増えたことは、戦術に安定するし、強いですよね。中国は3番から一気に190センチ台になりますから。そこのミスマッチを突かれるとか、世界的にそういう状況なので、今の日本のバスケットでそのポジションの人たちが増えたのは大きいかな。