過去18年間のWリーグの歴史において、14回(旧日本リーグ時代を含めば20回)と圧倒的な優勝回数を誇る女王・JX-ENEOSサンフラワーズ。10連覇まであと2勝に迫っている。今週末24日(土)、大阪市中央体育館(丸善インテックアリーナ大阪)にて行われるセミファイナルでは、旧日本リーグ時代から第1回Wリーグにかけて10連覇を果たしているシャンソン化粧品シャンソンVマジックと対戦。JX-ENEOSが大記録に並ぶか?それともレコードホルダーのシャンソンが阻止するか!?
現在のWリーグで活躍する12チーム中、1967年の第1回日本リーグから現在まで優勝経験があるはJX-ENEOSとシャンソン、そして富士通レッドウェーブの3チームしかない。
3月24日(土)16:00 セミファイナル
JX-ENEOSサンフラワーズ(1位)vs シャンソン化粧品シャンソンVマジック(4位)
昨シーズンに続き、シャンソンはこの大一番でケガに悩まされている。「シックスマンの3人(増岡加奈子選手、鈴木一実選手、井澗絢音選手)をケガで欠く中、5人だけでどうすれば勝てるか本当に悩みました」と頭を抱えていたのが丁海鎰ヘッドコーチだ。しかしピンチはチャンス。出番が回ってきた新戦力がチームを救ってくれた。
「加藤がシックスマンとして活躍したことで試合の流れが変わり本当に良かったです」
丁ヘッドコーチが名前を挙げた加藤優希選手。過去2シーズンはケガのために、Wリーグのキャリアは5試合しかなかった。ようやく今シーズンより復帰し、はじめてのプレーオフに臨んでいる。6点を挙げて大役を果たし、富士通レッドウェーブを70-61で退けるのに大きく貢献した。
ボールと人が連動しながら20本のアシストを記録し、シャンソンとして目指すべきバスケットができつつあることを本川選手も実感している。
「今までであれば自分と誰か、最終的には自分がやらなければいけないバスケットが多かったです。でも今は、全員でチームプレーに徹することができています。パスがしっかり回っているという部分では、いつもとは違うシャンソンになっているという手応えは感じています」
本川選手とともに日本代表の河村美幸選手、移籍してきた落合里泉選手が得点源である。加えて、「リーグ終盤にかけて徐々に自分たちの力を発揮して、上位チームとも対等に戦えるまで成長している」と本川選手が期待しているのが内野智香英選手と谷村里佳選手だ。
ケガにより「逆にチームが団結したのかなっていうのも大きい」と、この状況を前向きに捉えている。ケガ人は多いが、それでも一人ではない。「10連覇は阻止したい」と本川選手は力を込め、一戦必勝でファイナル進出を目指す。
これまでのようなセミファイナル3戦2先勝方式(ファイナルは5戦3先勝方式)ではなく、やり直しが効かない一発勝負は“何が起こるか分からない”と奇跡を期待してしまいがちだ。だが、女王JX-ENEOSサンフラワーズの吉田亜沙美キャプテンは、「一発勝負であろうと相手がどこであろうと、JX-ENEOSのバスケットを40分間徹底することが一番のポイントになる」とこれまでのスタンスと何も変わらない。さらに続けたひと言に驚かされた。
「このルールになったのは昨シーズンからでしたっけ?」
本当に目の前の試合しか見えていない集中力こそが、強さの秘訣でもある。
完璧なJX-ENEOSにおいて、唯一、不安要素を挙げればケガによってポイントガードが手薄になっていることだろうか。昨シーズンの新人王である藤岡麻菜美選手の復帰は遅れており、山田愛選手もプレーオフから戻ってきたばかりである。吉田選手は「私を少しでも休ませて欲しい」という思いを込めて、宮崎早織選手をキープレーヤーとして挙げた。ケガ人がいたことがチャンスとなり、プレータイムは平均9.3分から17分まで伸びている。ポイントガードとしての経験を積んだ成果を見せるプレーオフであり、10連覇に欠かせない存在と言えよう。
今シーズンの戦績は、3戦全勝でJX-ENEOSが勝利している。丁ヘッドコーチは、「誰が見ても7対3のレベル差があります」と実力は認めざるを得ない。「それでも何が起こるか分からないのがバスケット」と続け、勝負師は決戦に向けて、今なお頭を悩ませていることだろう。桜前線とともに、ピンクがチームカラーのシャンソンが奇跡を起こすことができるか!?
3月24日(土) 丸善インテックアリーナ大阪(大阪市中央体育館)
セミファイナル
14:00 デンソー vs トヨタ自動車(NHK-BS1生中継)
16:00 JX-ENEOS vs シャンソン(NHK-BS1生中継)
3月25日(日) 丸善インテックアリーナ大阪(大阪市中央体育館)
13:00 3位決定戦
15:00 優勝決定戦(NHK-BS1生中継)
文・写真 泉 誠一