「リバウンドやルーズボールに関しては、シーズンに入ってからも本気で取り組んでいます。ヘッドコーチもそこを買ってくれて先発で使っていただいています。リバウンドは本当に自分にとっては一番重要なプレーです」
サンロッカーズ渋谷に70-57で勝利した2月16日の試合後、田代直希選手は自分の長所についてそう語ってくれた。
その日のリバウンド数はゼロ。翌日は2本、今シーズン平均2.5本。リーグ全体で69番目と平凡な数字でしかない。だが、誰よりも果敢にボールへ向かい、獲れずとも弾き出しながら献身的にマイボールにすべく、リバウンドに飛び込んでいた。
スタートダッシュに欠かせないリバウンドとディフェンス
「僕なんてチームの中でそんなに上手い方ではないのに先発で使ってもらっているので、本当に最初でコケないことですよね」というのが今の心構えである。第1クォーターでスタートダッシュするのが琉球ゴールデンキングスの大きな特長であり、強さの秘訣のひとつでもある。2018年に入ってから12試合が行われたうち、2月4日の京都ハンナリーズ戦を除いて、いずれも第1クォーターにリードを奪っている。唯一、10-25と大コケしてしまった京都戦は勝つこともできなかった。そのときの反省も踏まえ、田代選手は「リバウンドとディフェンスさえ徹底できていれば、そんなに点差が開くことはない。本当にその2つはすごく意識してプレーしています」と自信を持っている。
SR渋谷戦の前節に対戦した滋賀レイクスターズ戦では、12点を挙げた。専修大学時代、4年次の関東大学リーグ戦では平均14点でランキング11位。その後のインカレでも国士舘大学戦で24点、日本大学戦では28点を挙げており、オフェンスで活躍していた。しかし、プロとなった今では「シュートは調子が良ければ点数を獲れるとは思いますが、そこにこだわりを持っていないです」と言い切る。いつも試合後に振り返るポイントは、「リバウンドを何本獲れたとか、ディフェンスのあそこがダメだったとか。そこに執着心を持ってやっています」と揺るぎない信念を持って取り組んでいる。
ポジティブかつ明確な佐々ヘッドコーチの指導で変わったリバウンドへの意識
リバウンドへ意識が変わったのは、佐々宜央ヘッドコーチとなった今シーズンから。
「技術やシュート力ではチームメイトに勝てないので、僕にできることはリバウンドやルーズボールだと思っていました。佐々ヘッドコーチも同じようにそこに期待していると言ってくれました」
チームとして求められること、自分としてやるべきことが明確になったことが功を奏し、昨年11月5日のレバンガ北海道戦から先発の座を勝ち獲っている。
佐々ヘッドコーチの前向きな指導法にも救われてきた。それまでの田代選手は、「やられてしまったことをすごく引きずっていました」とネガティブ思考だった。だが、佐々ヘッドコーチは「過去のことは引きずるな」と言い続けるとともに、「褒めてくれるところは褒めてくれるし、ダメなところはダメと指摘してくれるので僕としてもすごくやりやすいです」とポテンシャルを引き出し、思い切って戦えている。
「リバウンドには毎回飛び込んで行ってますし、どれだけ飛び込んでも0本という日もあります。逆に獲りに行ったことで全部自分の方に落ちてくることもあり、そういった波は必ずあります。でも、それを続けることに意味があると思っています。いつでもリバウンドを獲りに行くだけですし、行かなければ獲れません。サイズがない分、いかに体にぶつけて獲りにいくかを意識しています」
影武者として支える選手がいるからこそ、チームの結束力は自ずと高まっていく。琉球が西地区首位に立っている今、選手それぞれが与えられた仕事を全うしている証でもある。
文・写真 泉 誠一