これまでの平均失点において、リーグトップの琉球ゴールデンキングスは66.5点。アルバルク東京を挟んで3位のサンロッカーズ渋谷は70.4点だった。互いにルーズボールなどの泥臭いプレーを信条とする対戦は、予想通りそれぞれの良さを消す見応えあるディフェンシブな戦いでもあった。結果は70-57。西地区首位の琉球が勝利し、今節の先手を取った。
勝敗を分けたのはルーズボールに対する執着心など”数字に表れない仕事”の差
「長谷川(智也)くんには前半で9点(合計11点)を獲られてしまったのは痛かったが、それ以外はベンドラメ(礼生)も乗らせなかったし、チームディフェンスではあるが相手の個人の特長をしっかり潰していったことがこの結果につながった」と佐々宜央ヘッドコーチはディフェンスの出来を評価する。マンツーマンでありながらも、ゾーンのように選手同士が連動する隙のない激しいチームディフェンスが勝利を呼び込んだ。
一方、敗れたSR渋谷だが、「激しさという面では、ある程度はやりたいことはできた」と勝久ジェフェリーヘッドコーチは及第点を与えたように、ディフェンスでは平均失点内に抑えている。勝敗を分けた差は、「シュートを打ったあとのリバウンドは相手の方が圧倒的に上だった。あとはルーズボールに対する執着心も、相手の方が先にコートにダイブしていたり、その部分の気持ちが差として表れていた」。本来、SR渋谷が上回らなければならない”数字に表れない仕事”の部分で負けてしまった。
琉球の堅守は、57点に抑えた少ない失点以外にもしっかりと数字に表れている。SR渋谷のフィールドゴール率を36.8%にし、14本のターンオーバーを与えていた。シュートが入らなかった点について、「相手のプレッシャーが激しく、自分たちのオフェンスのスタートラインが高く高くなってしまった」と勝久ヘッドコーチは、琉球の前掛かりなディフェンスに対して、オフェンスが高い位置から始めさせられてしまった反省点を強調した。それにより、タフショットを強いられるケースが多かった。SR渋谷も、琉球のフィールドゴール率は39.4%に抑えている。だが、「39%に抑えたにも関わらず、70点獲られたのはすごく高いように思える。3Pシュートを結構決められてしまった」と9本許した3Pシュートも大きな敗因であった。
平均35.8%の成功率でリーグ5位の3Pシュートに、琉球は自信を持っている。「SR渋谷のディフェンスはすごく縮むので、そこに対して縮めさせて外からシュートを打つパターンを狙っていた。ただ世界基準になるためには、この試合でも小さい選手たちがアタックしたときに何度もブロックされ、(岸本)隆一も最後のところでフィニッシュできなかった。日本人選手でも、ビッグマンが合わせてきたときに最後のフィニッシュをしきれるかが大事」と佐々ヘッドコーチはオフェンスでの課題点を付け加えた。
サラリと言った”世界基準”という言葉が耳心地良い。ちょうど1年前、ルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチ(現A東京)とともに、日本代表のアシスタントコーチとして日本人のレベルを世界基準に近づけるために尽力してきた佐々ヘッドコーチ。琉球でその試みを継続し、開花させるチャレンジを現在進行形で行っている。
東高西低のレベル格差に対し、西から「ワンパンチを入れたい」
東高西低のレベル格差が生じているBリーグだが、「一泡吹かせたいというか、少しでも影響を及ぼせるように西からワンパンチを入れたい」と挑み、結果を得ることはできた。しかしここで満足しているわけではない。田代直希選手は、「東地区との対戦はこれまでいずれも1勝1敗。同じ結果では1歩先に進むことができません。なんとしても2連勝をしてチームとしても前進していきたいです」とギアを上げた。
SR渋谷の勝久ヘッドコーチは、「リバウンドを取るところまでがディフェンスということをもう一度再確認してファイトしていきたい」とあらためてディフェンスで真っ向勝負し、ホームでの勝利を狙う。そのためにも57点という低い得点では勝機も見出せない。「オフェンスはボールを大事にすること。ポゼッションゲームで負けないためにもボールを大事にし、相手にオフェンスリバウンドを獲られないことが大事になってくる」と修正点を挙げた。
アイラ・ブラウン選手は古巣のホームで通算5千点達成!
金曜ナイトゲームにも関わらず、早い時間帯から席は埋まり、3千人を越えた青山学院記念館。本日2戦目もすでにチケットは完売となっており、若干枚数を販売する立見席のみと盛況だ。黄色いSR渋谷ファンの中に「顔なじみが多く、みんなが強い思いでサンロッカーズを応援してくれていました。久しぶりにここに帰ってきて、とても良い気分でプレーできました」と笑顔を見せたのは、古巣のホームで通算5千点を達成したアイラ・ブラウン選手(Bリーグ以前の記録を含む)。
逆に琉球から移籍してきた山内盛久選手は、「意識しないようにすること自体が難しく、自分の中でも感慨深い部分がすごくありました」。その感情を抑えつつ、「まずはチームが勝てるように自分のすべきことを徹底することを今日のゲームの目標として掲げていました……が、大事なところで単純なミスなどがあったので、次はそこを無くしてもっともっと自分らしいプレーを出していけるようにしたいです」とリベンジに燃える。
レギュラーシーズンにおいて、この両チームの対戦は今日が最後。昨日の勝利で2勝1敗と琉球が勝ち越している。これまでの結果を見ても、70点が勝敗を分ける目安点になりそうだ。得点が次々と入るのがバスケットの醍醐味だが、SR渋谷vs琉球戦は互いにコートを這いつくばってボールに飛びつき、得点を許さないディフェンシブな攻防。それもまたバスケットの楽しさを十分に表現している。フルコートで身体を張り続けるタフな戦いは、きっと満員の観客をヒリヒリさせるほど熱くなるはずだ。第2戦は本日15:05ティップオフ!
文・写真 泉 誠一