準々決勝で新潟アルビレックスBBを96-72で下した後、「今日のディフェンスは非常に良い出来だった。100点とはいかなくても80点は付けたい」と、シーホース三河の鈴木貴美一ヘッドコーチは胸を張った。準決勝で川崎ブレイブサンダースを87-68で下した後、キャプテンの橋本竜馬は「ディフェンスもリバウンドもルーズボールも最後の最後まで手を抜かず、全員が集中して戦うことができた。この大会を通じてステップアップしている手応えがある」と笑顔を見せた。ともに伝わってきたのは『日本一』への揺るぎない自信だ。決勝の相手に決まった千葉ジェッツふなばしとは今シーズン初の対戦となるが、「うちのバスケットを遂行するだけ」という橋本の言葉に迷いはなく、その目はここしばらく遠ざかっている“頂上„を見据えているように感じられた。
だが、2年連続の“頂上„を見据えていたのは千葉も同じだ。47-42と5点リードで折り返した後半、ダニエル・オルトン、比江島慎の3ポイントシュートで三河に傾きかけた流れを小野龍猛の3連続3ポイントシュートで断ち切ると6分50秒には48-60と二桁リードを奪った。さらに試合の流れを決定づけたのは残り6分。三河の起点となる桜木ジェイアールが4つ目のファウルを犯しベンチに下がったのを機に千葉のトランジションバスケットが爆発する。ベンチから「プッシュ、プッシュ」の声が聞こえてきそうな速い攻撃で三河のディフェンスを振り切ると、3Q終了時には76-54と2連覇へ大きく歩を進めた。対する三河も4Qには金丸晃輔のバスケットカウント、狩俣昌也の3ポイントシュートで追いかけるが、千葉はケガの富樫勇樹に代わって司令塔を任された西村文男が最後まで緩急を付けたゲームコントロールで三河を寄せ付けず89-75で天皇杯2連覇を成し遂げた。
「“個„でなく、チームで戦ったことが最大の勝因」と大野篤史ヘッドコーチが語ったように、マイケル・パーカー、ギャビン・エドワーズを含め千葉は全員がエネルギッシュにコートを駆け抜けた。三河が犯した“らしくない„18個のターンオーバーは千葉のスピードに煽られた結果とも言えるだろう。大会前のケガで欠いた富樫の穴を感じさせることなく、自分たちのバスケットを貫いた先に千葉の栄えある2連覇があった。
天皇杯決勝 千葉ジェッツvsシーホース三河
文・松原貴実 写真/キャプション・安井麻実