悔しさを味わうこともできなかった昨年のインカレ
昨年に続く2連覇に挑んだ早稲田大学だったが、第52回関東大学女子バスケットボール選手権大会(以下トーナメント)は惜しくも2位に終わった。しかし、決勝リーグは2部Aの山梨学院大学を除き、1部の3チームはいずれも2勝1敗で並ぶ。決着の行方は、3チーム間のゴールアベレージ(総得点÷総失点)に委ねられた。早稲田大学は1.062、優勝した筑波大学1.0677と0.0057の僅差で2位。春から接戦となった女子大学バスケは秋のリーグ戦、そしてインカレが楽しみである。
「シーズン最初の大会であるこのトーナメントからバンと行けば、良い波に乗れ得ると思うので大事にしていきたいです」と田中真美子選手は、一戦必勝で優勝へと向かっていた。その思いは届かなかったが新チームになったばかりであり、焦りはない。今シーズンの目標は “日本一” を掲げ、最後に笑えば良い。
昨シーズンのインカレは準々決勝で拓殖大学に敗れ、最終日のメインコートにその姿はなかった。「なんか悔しさも味わうことができなかった感じです。インカレ終了後も、どこか終わった感じがしない日が続き、みんなも同じような感じをしていたようです」と振り返り、ずっとあのときの悔しさを引きずっている。
「早稲田はリーグを連覇したり、トーナメントで優勝しても、最後のインカレで勝ち切れないことが入学した当時からずっと続いています。最後の年こそ日本一になりたいという気持ちが強いです。とにかくインカレに向けて積み重ねていくためのチーム作りを心がけています」
最後方から声を出して盛り上げるセンター
今シーズンの早稲田大学は大きな変化があった。これまで指揮を執ってきた藤生喜代美ヘッドコーチは今春より高校の教員となり、次のステージへと旅立つ。トーナメントには以前男子チームを見ていた倉石平顧問が、準々決勝からベンチで指示を送る。しかし、多忙な教授はなかなか練習に参加することはできず、厳しい船出を強いられている。
「大変なんですが、それはもう仕方のないことです」と田中選手はこの状況を受け止め、4年生が中心となって練習に勤しむ。「OGやOBの方々がサポートをしてくださっているのでそこは言い訳にせず、前を向いて自分たちができることをやろうと決めました」とラストシーズンをスタートさせた中での、トーナメント2位は評価に値する。
インサイドの要ながらも、性格的にどちらかと言えば後ろからついてくるタイプに見える田中選手。4年生になり、コーチ不在の状況に意識の変化はあるのだろうか?
「やっぱり試合がはじまると『あぁ、4年生になったんだな』という自覚が、より一層出ました。プレーで引っ張ることよりも、コート上では声を出して盛り上げていきたいです。プレー面は高田(静キャプテン)が引っ張ってくれるので、そのサポートと声で引っ張っていきます」
東京成徳大学高校時代も、3年生になったら見違えるように一番後ろから声を出し、仲間たちの背中を押していたのを思い出す。
頼もしい後輩たちを生かすバイ プレーヤー
日本一を目指すチームにとって、「勝ち切るための気持ちの強さがまだ足りないとすごく感じていました。みんな良いものを持っているのに試合でそれを出し切ることができないこともあります。だからこそ、一本のシュートにこだわったり、強い気持ちや爆発力は練習中から出せるように意識していかなければなりません」と田中選手は課題点を挙げた。
大学ラストシーズンは、チームとして厳しい状況を強いられている。しかし、田中選手にとっては成長できるチャンスと捉えることもできる。
「目標はチームを日本一にしたいし、日本一になって終わりたい。今年は自分が得点を獲ることではなく、どう動けば周りがプレーしやすくなるかを考えてバスケをしたいと思っています。ゴール下では泥臭く面取りをしたり、チームがうまくいかなかったときにリバウンドを獲って得点をねじ込めるようにしたり、みんながシュートを打ったときにいつでもリバウンドに入ってチームを助けられるような選手になりたいと、4年生になって思いました」
女子日本代表候補に選出された中田珠未選手ら「本当に後輩が頼もしい選手ばかり」と逸材は揃っており、「後輩たちを生かすことをメインに考えれば、きっと良いチームになります」と自信を見せる。そして、最後にこんな約束をしてくれた。
「見ていてください!インカレのときにはきっと『成長したね』と言ってもらえるようにしてみせます!!」
関東大学女子バスケットボール連盟
早稲田大学バスケットボール部
文・写真 泉 誠一