「初めてこんなJX-ENEOSを見るので、どうしちゃったのかなと思っています」
11チーム総当たりとなるリーグ戦での1巡目(10試合)を終えた12月7日。1位デンソーアイリス、2位富士通レッドウェーブに続く3位にいるJX-ENEOSサンフラワーズだが、戦績を見れば3チームとも8勝2敗の同じ勝率で並ぶ。
しかし、冒頭にある吉田亜沙美選手のコメントのように、今シーズンのJX-ENEOSにはもどかしさを感じていた。
どうしたJX-ENEOS!?
昨シーズン、2月15日に行われた富士通戦で左ヒザ前十字じん帯を断裂した吉田選手は、長いベンチ生活を余儀なくされた。それは初めての経験でもある。
ケガがないのもトップ選手の条件であり、それを証明するように2006−2007のルーキーシーズンから大ケガに見舞われるまでの約7年半の間に欠場したのは、たった7試合のみ。キャリアを振り返っても、唯一2007-2008シーズンのファイナルで富士通に敗れたが、それ以外は常に頂点に君臨しており、7連覇を目指すJX-ENEOSの黄金時代を支えている。
ベンチで戦況を見守る日々が続く吉田選手にとって、JX-ENEOSの現状はどう見えているのだろうか?
「まだまだですよね、やっぱり。自分が知ってるJX-ENEOSはこんなものじゃないですし、まだチームになり切れていない。厳しいことを言えば、まだバラバラであり、選手一人ひとりがみんなのことを思ってプレイができていないというふうにやっぱり見えてしまいます。だから、負ける試合や競ってはいけないチームに競ってしまうという試合が多かったです。チャンピオンチームらしいプレイをしなければいけないだろうし、見ている人たちに応援したいと思ってもらえるようなチームにならなければいけない。でも現状は、そこまでなり切れていない。若いからというのは言い訳にしかならないと思いますし、それでも経験ある選手たちが出ているわけですからね。でも少しずつ、本当に少しずつですけど、良くはなってきています。オールジャパンの時にはもう少し完成した形で臨められるのではないかと思って見ています」
今年は10月に世界選手権とアジア競技大会があったため、例年よりも遅い10月31日にWJBLは開幕。10試合を終えた現在、2敗しかしておらず、目下6連勝中という結果を見れば上々の出来である。しかしながら、女王らしからぬ冷や汗をかくような試合を目にし、圧倒的な強さが脳裏にインプットされているだけに、そのギャップに戸惑いを感じずにはいられない。
「『どうしたJX-ENEOS!?』『そんなんじゃないよな?』と、たぶんみんなが思っていることでしょう。自分たち自身もみんなが感じているはずです。そこを埋めていくためにも5人が一つにならなければならないですし、チーム16名全員で挑んでいかなければいけません。それがまだでき切れていないかな、という感じです。ポジティブに言えば、まだチームとして完成していないですし、改善できる余地はあります」
私が戻ったところで、何のプラスにもならない
開幕戦(10月31日)、トヨタ自動車アンテロープスに56-65で敗れた。11月15日、富士通レッドウェーブには64-92、28点もの大差をつけられて終わった。敗れた2試合を観戦した後、吉田選手が復帰しても簡単に勝てないのではないか、という不安が過ぎる。彼女自身も同じ考えだったようで、さらに足りない点を挙げてくれた。
「今この状況で戻っても、勝たせてあげることはできないと思います。精神的にラクにさせることはできても、やっぱり一人ひとりが意識を変え、自分が変わらなければいけないという思いが強くないと一つのチームにはならないです。私が戻ったところで、何のプラスにもならないと思います。今日の試合(羽田ヴィッキーズ戦)でも、前半はすごく良い試合をしてくれました。気持ちの持ちようでこのようなゲームができる力があるわけですから、やっぱりどこかで出し惜しみしているところがまだあるのだと思います。安心しきっている、勝てるだろう、負けていても後半どうにかなるだろう、といった安易な気持ちがまだ少し選手たちに残っているのだと思います。チャンピオンチームだからどのチームにも勝てるというわけではないですし、挑戦者として臨んでいかなければ連覇し続けるのは厳しい。そのことは自分たちが一番分かっているはずです。そこの意識の持ちようが大事です」