チームの変化、そして成長をもたらした林ヘッドコーチ。それは岡田も実感している。
「昨年からWリーグが一つになり、さらに勝つことが厳しくなりました。昨シーズンはまだまだ甘さがあり、プレイにも結果にも現れませんでしたが、林ヘッドコーチが来た今シーズンは、一つひとつのプレイの大事さを学ぶことができました」
チームとして目指すバスケが方向転換したことで、バスケに対する姿勢も大きく変わって行く。
「エイトクロスを習得するためにはコミュニケーションが大事になります。やはりチームメイト同士で話をすることや、できていないプレイに対しても指摘し合うことが、今まで以上に出るようになったと感じています」
昨シーズン1勝もできなかったチームが、今シーズンは2勝できた。目標には届かなかったが、充実したシーズンでもあった。
「林ヘッドコーチがこのチームに来ていただいたことでチーム改革が行われ、今シーズン4勝を目標にしました。結果として2勝しかできませんでしたが、やはり昨シーズンはどのチームを相手にも、競った試合はありましたが結果は振るわず1勝もできませんでした。今シーズン1勝できた羽田(ヴィッキーズ)戦は、林ヘッドコーチがここに来て指導していただいたおかげだと思っています」
林ヘッドコーチは、目指すバスケットの浸透度は3割程度と言う。しかし、「子供たちはものすごく怒られたにも関わらず、よくがんばりました。そして、この短期間で三菱と接戦ができるくらい成長できたのは上出来です」と、選手たちを労っていた。手応えを感じるシーズンだったからこそ、来シーズンも継続できない状況が悔しい。「これが最後」と言い聞かせてきた岡田自身の今後は、「どうなるか分からない状態」だと言う。
今は作品がない……日本の将来が心配
1968年、日立甲府からスタートした歴史あるチームだが、今シーズン限りで一度トップリーグの舞台から下りる。しかし、山梨クィーンビーズは今後も存続していく。来年度は関東実業団リーグへ移籍し、WJBL返り咲きの吉報を待つこととなる。勝てなかったチームを2勝させ、上位チームとも接戦できるまでに改革した林ヘッドコーチは、残念ながら韓国へ帰るそうだ。
「山梨を1シーズン見て来ましたが、もし続けられていれば、もっと良いチームになり、本当におもしろいプレイを見せられたでしょう。それができないのはもったいない……」
志半ばでチームを離れなければならない悔しさ、同時に名将は日本バスケ全体への警鐘も鳴らしている。
「日本リーグに戻って1シーズンを戦いましたが、どのチームも3Pシュートに命を賭けてしまっている。国内であればそれで良いかもしれませんが、国際試合では難しくなります。どのチームを見ていても今は作品がない。三菱戦に敗れはしましたが、我々が『ゲームに勝った』と言うのは、作品があるということです。三菱は3Pに勝敗の比重が委ねられてしまっています。その点うちは、やるべきプレイを持って戦い、その上で得点を獲ったわけですから、誰が観てもおもしろいバスケットだったはずです。WJBLの全体を見回しても、シュートが良ければ勝つというチームが多い傾向にあります。これは批判ではなく、日本の将来を心配しているから言うのです」
5シーズン振りにWJBLに復帰し、「日本航空を指揮していた時は日本リーグ全体としてプレイが上手かった」と当時と比較。さらなる心配ごとを吐露してくれた。