これが最後 ──
昨年10月、来季WJBL2014-2015シーズン参戦を見送ることが決まった時からこの言葉を自分に、そしてチームに言い聞かせてきたのはチームキャプテンの岡田美香。ルーキーシーズン(2006-07)から山梨クィーンビーズ(甲府クィーンビーズ時代含む)一筋の選手である。突然、未来を奪われ、現実を受け入るために使い続けた「最後」が指すのは、WJBLのステージか、今シーズンか、このチームか、はたまた現役引退なのか……岡田自身にとってもその着地点は定かではない。しかし、来シーズン再びWJBLの舞台に立てないことは、今シーズンが始まる前から決まっていた。
今シーズンの山梨は、2005年に日本航空を率いオールジャパンを制した実績ある名将、林永甫ヘッドコーチを招へい。新人選手3人と移籍選手2人を獲得し、積極的な再建に着手していた。しかしシーズン開幕前、メインスポンサーであるルネサスエレクトロニクス株式会社の撤退により、チーム基盤が音を立てて崩れて行く。芹澤薫代表理事は、「正直言って私どもも驚いています」と話すほど、青天の霹靂であった。
ホームゲームではスポンサーバナーが会場いっぱいに掲げられ、地元テレビカメラも入っている。それだけを見れば継続できそうな印象も受けたが、メインスポンサーが下りたことで体育館が使用できなくなってしまったことも大きな打撃となった。
「練習環境が大変厳しくなるのが、来シーズンの参戦を見送ることとなった理由のひとつです。やはり相応の環境が無いと、なかなか選手を獲得すること自体が困難になります。一時的にWJBLから撤退しますが、これから再建の道を探るための期間となります」
芹澤代表理事は苦渋の選択をしたが、1年でのWJBL復帰を目指す。2015-2016シーズンへ向け、スポンサーや練習環境の確保に奔走することとなる。
チーム改革により、勝ち獲ることができた2勝
「悔いなく、自分が今できることを精一杯試合にぶつけようと思って臨んでいました。特にホーム山梨で開催される最終戦は、全てをぶつける気持ちでした」
キャプテンの岡田は強い思いで最終戦のコートへ向かった。相手は6位三菱電機コアラーズ。気迫が優った前半は34-25と9点リードした山梨であったが、自力で優る三菱電機に4Qだけで31点を許し、65-78で敗れ、残念ながら最終戦を飾ることはできなかった。通算成績2勝31敗、12チーム中12位。前日も同じく三菱電機と競った試合展開となった。相手に4連続得点を許せば、5連続得点で点差を縮め、粘りを見せたが得点を上回れず、60-72でこの日も敗れた。しかし、林ヘッドコーチは笑顔で試合を振り返っている。
「山梨に来て、初めて子供たちを褒めてあげました。結論的に言えば、ゲームに勝ってスコアで負けた。うちも一生懸命得点を獲りましたが、相手の3Pで離されてしまった試合でした。今日のゲームは満足しています」