昨年の今頃、上位8チームはプレイオフ 1st Roundの最中であった。しかしプレイオフ進出を逃したトヨタ紡織サンシャインラビッツにとっての2月は、今シーズンへ向けて始動した時期でもある。それまでとは違い、早々にやって来たオフシーズンは長い長い時間となった。
「すっごい………」
あまりの長さのせいか、オフシーズンを振り返ってもらおうとした#1岡田 麻央は、続く言葉がしばらく出て来ない。
7勝15敗、8位アイシンAWウィングス(8勝14敗)とはたった1ゲーム差で、WJBL2012-2013シーズンは年を越すことができずに終わった。年明けのオールジャパンはJX(現JX-ENEOS)に48-92で敗れ、準々決勝敗退。その時点で全日程が終了。同時に10ヶ月に及ぶオフシーズンに突入し、今シーズンへ向けた準備の幕開けでもあった。
「もう始まるの?という感じでした。まずは走り込みなど体力作りからの再開でしたが、中川さんも私たちに伝えたいことが多く、短い時間では伝えきれないと常に言っており、オフシーズン中に基礎から叩き込まれました」
選手の自主性から改革に着手
昨シーズンより元日本代表ヘッドコーチの中川文一が就任。中川HCが目指すオフェンスはフリーランス。左から右へと8の字を書くように移動するエイトクロスから、どこからでも攻められるスタイルへ変革を行ってきた。
「昨シーズンはエイトクロスがまだ抜けきれずにいました。今シーズンは、スクリーンをうまく使って相手を崩すエイトクロスの良さを残しつつ、誰でもどこからでも攻められるようにし、相手にアジャストされず自分たちの持ち味を出せるようなオフェンスになりました」
手応えを感じている岡田だが、接戦となった2月1日(土)の山梨クイーンビーズ戦では、中川HCの怒鳴り声が会場に響く試合展開となってしまう。
「あまりサイズが無い相手だったこともあり、ポストを狙って攻めようとし過ぎてしまったことに対し、そのプレイを止めろと言われたり、リバウンドを獲られたりファウルも多かったり、相手の勢いに押されたことで怒られました」
インサイドにボールを入れることを意識し過ぎて選手たちの足は止まり、積極性を欠くプレイに中川HCの怒鳴り声がコートへ注がれ続けた。日本代表ヘッドコーチとして、身体能力や身長差ある世界の強豪と渡り合ってきた中川HCにとって、上位チームと比較しビハインドを背負ったトヨタ紡織を指揮することは同じこと。ワンランク上げるために「選手たち自身がプレイを作って行くこと」を求めている。
会社としてのサポートも変化を見せているそうだ。
「これまで就業時間が午後4時までだったのですが、昨シーズンは午後3時まで、今シーズン中は午後2時までになり、練習開始時間が早くなりました。それは選手にとってはすごくうれしく、これまでは自分の時間が全然ありませんでした。練習してご飯を食べて、さらに夜練習して家に帰って寝るだけだった生活でした。1時間違うだけでも、ほんの少しですが気持ち的に余裕ができます」
練習環境の改善に一役買った中川HCだが「良くない。全然良くない」と不満顔。しかしコート内同様、選手自身がうまく練習時間を作っていることを気遣ってもいた。
「早朝から自主練習しており、日中は仕事もあるからその分、夜は遅くまで練習することになる。選手たちには時間の負担を相当かけているよね。でも、そうしないとなかなか練習量を補えない」
厳しいことは分かっている。それでも上位を狙わねばならないのがトップリーグに参戦するチームの宿命でもある。