「良い経験にしたい」
試合に臨む選手たちがよく使う言葉だ。しかし負けてしまうと、次なる勝利へ向けた糧にはなるだろうが、そのチャンスがすぐ訪れるとは限らない。レベルを上げながら旅を進めていくドラクエでは、負けては経験値を上積みできず、勝つことこそ絶対なのである。そして、全勝でアジアを制した女子日本代表選手たちだからこそ、“チャラランタチャッチャー♪”、全員がレベルアップに成功したのだ。
帰国後、休む間もなくWリーグが開幕し、早くもその成長した姿を披露した。
下部リーグW1に低迷していた三菱電機から3人のハヤブサジャパン
日本代表3人(宮元美智子、王新朝喜、櫻木千華)を擁する三菱電機コアラーズ。昨シーズンはあと1歩のところで4強に残れなかった。しかしほんの少し前となる2010-2011シーズン、王、櫻木が加入した時は下部リーグとなるW1リーグにいた。宮元に至っては、入団した2005-2006シーズンはWリーグだったがすぐさま降格。その後も入替戦常連チームのまま昇格できない時期もあり、昨シーズンまでの8年間で半分となる4シーズンもW1リーグに甘んじていた。昨シーズンから1リーグ制となり降格の心配はなくなったが、すでに三菱電機は下位争いからは脱却しており、2011-2012シーズンから2年連続5位。一昨シーズンは4位の富士通に6勝差をつけられ、その差は開いていたが、昨シーズンは4位シャンソンとはたった1ゲーム差と惜しいところまで来ている。プレーオフセミファイナルも射程圏内にある今シーズンは三菱電機にとっては飛躍の年であり、期待は高い。
日本代表として主力3人が抜け、アジア選手権により開幕が遅れたことが功を奏し、チームとしての底上げができたようだ。開幕戦となった富士通レッドウェーブ戦では、2年目の池谷悠希がシックスマンとして流れを呼び込む。
「昨シーズンはスタートの5人だけのチームでした。強いチームは誰が出ても活躍できるし、選手層が厚いです。今年の三菱電気はベンチメンバーがレベルを上げてきたと思っていますし、今シーズンは誰が出ても同じように活躍できます」と池谷は自信を見せる。
山下雄樹ヘッドコーチも、「(日本代表の3選手以外)残ったメンバーが非常に今日は活躍してくれたので、とてもうれしいです。今年は池谷と渡邊(亜弥)、この2人に期待しています」と話しており、その期待に応える活躍をしてくれた。
アジアチャンピオンの自信を纏った櫻木 千華
池谷の活躍に対し、「知らない間に成長していて、すごいビックリしています」と言うのは、しばらくチームを留守にしていた櫻木だ。著しい成長を見せているのは櫻木も同じであり、三菱電機を上位に押し上げる原動力となっている。その活躍が認められたことで日本代表に選出され、特にディフェンスでは高評価を得た。
「ディフェンスは日本代表ですごく自信になった点なので、そこだけは譲れないと思っていました。たとえ1本、2本やられても、それはたまたまだと思って、自分から積極的に仕掛けて行こうという気持ちはありました」
アジアチャンピオンになったという成功体験が櫻木をさらに大きくしている。特にメンタル面での成長を感じる。その質問を向けると、“自信”というキーワードで櫻木が答えた。
「アジアチャンピオンになったことで、気持ちが強くなった点は確かにありますね。今日もレイアップ2本くらい外しちゃって、3Pシュートも入らなかったですが、そこでいちいち落ち込んでいたら周りにも迷惑をかけてしまいます。アジア選手権でいろいろ経験してきたことで、競っていても負ける気はしないと思っていました。その点では自信になっています」
自信を持ってプレイできていることで、ちょっとしたミスなどは振り返ることなく突き進めることを、櫻木はコート上で示し続けた。