もちろん、Wリーグのレベルの高さも痛感させられた。ただ、大差で敗れる試合もあった一方で、接戦であと一歩及ばなかった試合もあった。ほんのわずかな差で結果が白と黒に分かれてしまう、その積み重ねが6勝18敗という成績に集約。勝負の世界の厳しさを改めて思い知らされたシーズンでもあった。
「6勝できたので、運営してる身としてはとりあえず安心したんですけど、それ以外にも内容的には勝てたんじゃないかという試合が結構多くて、秋田さんや姫路さん、山梨さんにも勝てるチャンスがありました。今日も含めて、チャンスがあるところで勝ちきれない、点を決めきれないのが私たちの課題で、他のチームが苦しい時間帯でしっかり点を取ってくるというのは、やっぱりWリーグでやってきた強さなのかなと思います」
試合終了後にコートに整列した際、その後のコート1周の際に目を潤ませていたのは、本人曰く「22年のバスケ人生、やっと終わったなって。勝って終わりたかったので、その悔しさと、1年走り終えてホッとしたというのと、西堀(夏緒)が体調不良で来られなかったんですけど、このメンバーでできるのが最後というのもありました」とのこと。久冨自身は24試合中6試合の出場にとどまり、このシーズン最終戦も出場機会はなかったが、チームスポーツであるバスケットの良さ、仲間の大切さを改めて感じることができたようだ。

「若干親目線入りますけど(笑)、みんなの成長が嬉しいですね。引退する前にこの仕事をやってたら『なんで自分が試合に出られないんだ』って思うところはあったと思うんですけど、1回辞めたからこそ俯瞰して見られるのかなって。他の選手が練習通りのプレーができたのも、自分も一緒に練習で頑張ったからだという考え方ができるようになりましたし、これからのSOLUAを担っていってくれるみんなが頑張ってくれることが素直に嬉しかったです。今のメンバーは、あまり試合に出ない人も普段の練習で自分の役割を全うしてきたんだということをわかった上で頑張ってくれる。もっとこの選手たちに何かしてあげられないかなって思えるので、たとえ自分が試合に出られなくてもみんなが頑張ってくれたら報われると思ってます。
うちのチームって、ベンチが騒がしいのか(笑)、ベンチの写真を撮ってくれる方が多くて、それくらいみんな気持ちが入ってるし、それがこのチームのキャラクターかなって。そういう楽しみ方もしてくれる人がいたら嬉しいし、試合に出てないメンバーにも注目してほしいです」
久冨の出身は長崎県。長崎といえば、Bリーグに長崎ヴェルカが誕生し、B1最速昇格の快挙を達成したばかりか、この1月にはハピネスアリーナでオールスターも開催され、久冨の母校・長崎西高で1年先輩の田中大貴(サンロッカーズ渋谷)がMVPを受賞している。そして、今シーズンのSMBCはその長崎での試合も組まれ、久冨は選手として凱旋することができた。小学生の頃に県内で開催されたWリーグのサマーキャンプなどを観戦したことがあるという久冨は、故郷にバスケットの文化が根づいていることを喜び、これからの仕事を通じた故郷との接点、バスケットとの関わりにも希望を感じている。
「外から見てて『すごいな、こうなれたらいいな』って憧れてた場所に、まさか自分が立つことになるとは思ってなかったですし、長崎でバスケットの試合を見ることはなかなかできないので、そういう機会を長崎の子どもたちが得られたというのは素晴らしいことだと思います。永田萌絵(トヨタ自動車)も長崎の出身で、ああやって活躍してくれる選手がもっと出てきてくれたらいいなって思います。仕事ではSOLUA以外に、スポーツでの地域コミュニティー活性化にも携わってるので、長崎がバスケットで盛り上がってるのは嬉しいです。長崎の盛り上がりも、SOLUAがもっともっと強くなっていくこともサポートしていきたいので、今後が本当に楽しみです」

久冨は表舞台から姿を消すが、たった1シーズンのWリーガー生活でも得るものは決して少なくなかった。この経験を糧に、華やかな舞台を裏で支えていくことになる。SMBCのチームとしての進化と、バスケットがもたらす人や街の潤いに大きく寄与してくれることだろう。
文・写真 吉川哲彦











