準備という点でいえば、戦略面も周到に練られたものだった。サイズ不足をカバーするために、ディフェンスではボールマンに終始プレッシャーをかけ、一たび相手がボールコントロールを失えば、そのボールに迷わず飛び込む。そんな場面は、この新潟とのGAME2でも幾度となく見られた。自身もサイズのないチームでプレーしてきたという今野HCは、ルーズボールが発生した際の個々の動きにもこだわり、平面の低いボールを制することを練習で徹底してきたそうだ。
「1個しかないボールの出所を潰しにいくというのは、小さいからこそできること。そこで負けていたらゲームにも勝てないので、まずはそれを40分間、誰が出ていてもやり続けるということはずっと言ってきています。以前は前半20分まではできた、でも後半にできなくなるというところもあったんですけど、リーグ3週を経て少しずつレベルアップできているんじゃないかと思います」

SMBCのWリーグ参入が発表されたのは2024年4月。今野HCの就任は同6月のことだった。女子日本代表チームに長く携わり、東京医療保健大やENEOSでもアシスタントコーチを務めてきた今野HCにとって、初めて指揮権を託されるチャンスとなったのだが、仲間と手を取り合ってチームを形作っていくことに期待感を抱いて引き受けたということだ。
「率直に嬉しかったですね。HCになれるというよりは、ゼロから立ち上げるようなチームに携われることはそうそうないというところです。そこで自分がやりたいようにやるのではなくて、会社の皆さんや現場のスタッフの皆さんと試行錯誤しながら、1つのチームを会社全体で作れるというところに魅力を感じたので、大きなチャレンジではあるんですけど、やってみたいなと意思を固めました」
Wリーグ参入の背景には、仕事との両立による女性アスリートのキャリア形成という、全社を挙げた大きなミッションがある。Wリーグという国内最高峰の舞台に立って間もないSMBCの選手には、アスリートとしてまだ不十分なところもおそらくあるだろう。Wリーグに参入したからには、プロと同様の姿勢や行動を選手たちに求めていかなければならないのがHCという立場だが、今野HCにとってはこれまでの自身の経験、特に日本代表で得たものをチームに還元することができる機会でもある。











