選手・スタッフとフロント、そしてファンが一体となって作り上げてきたカルチャーのようなものは、移籍して東京羽田の一員となった髙原のキャリアに潤いを与えた。それが形となって表れたのがチームと髙原個人の好成績ということになるだろうが、「ヴィッキーズに来て良かったって、心から思ってます」と言いきるのは、自身の変化を知ることができたからだ。
「もちろんアイシンがあったから今の私がいるんですけど、『ハル、ヴィッキーズに行って変わったね』とか『楽しそうにバスケするようになったね』っていう声をいろんな人がかけてくれるんですよ、昔から私のことを知ってる人が。私はそれがすごく嬉しくて。良いチームなのが伝わってくるということを他のチームの人から言っていただく機会も多くて、その度にニヤニヤしてるんですけど(笑)、そんなに伝えてきてくれるくらい私は変わったと思うし、ファンの方が撮ってくださる写真を見ても『私、こんなに良い顔しながらバスケしてるんだ』って気づくんです。そうやって周りから教えていただいて、本当にバスケを楽しめてるんだなって思います」
先にも書いたように、東京羽田は髙原に対して得点面で大きな役割を与えている。髙原自身、萩原HCと話し合いながらその役割と向き合い、チームメートの理解も得てきたという。コンスタントに得点できる選手になろうと、常に考えながら練習に取り組んできた成果が表れているわけだが、多彩なシュートバリエーションでチームのトップスコアラーになったのは、これまで悩まされてきた怪我がきっかけでもあったということだ。決して諦めずに這い上がってきたからこそ、今の髙原には充実感がある。
「1回膝を怪我して、復帰した翌年に逆の膝を怪我したんですよ。それまで私はドライブ型で、3ポイントは苦手というかあまり打ちたくない選手だったんですけど、膝にブランクがある状態でいきなりドライブができるようにはならないので、3ポイントを磨こうとリハビリ期間中に考えて、怪我のおかげで1つ武器を得ることができたんです。怪我はすごくつらかったんですけど、それがなかったら3ポイントはないし、今のプレースタイルもないし、ヴィッキーズにも出会えてない。怪我も起こるべくして起こったんだろうし、いろんな人にも出会うべくして出会ってる。今振り返ってみると、頑張ってきて良かったって思うし、全て意味があって起こってきたことなんだなって思えるので、そこは自分を褒めてあげたい、頑張ってきた自分を認めてあげてもいいのかなって思います」
こうして物事をポジティブに受け止めることができるのも、髙原の強みの一つと言っていいだろう。優勝と昇格、ベスト5という勲章を手に、髙原はWプレミアという舞台で大きなチャレンジに向かっていく。
文・写真 吉川哲彦