「それが最後だと思ってたので、まさかまたこうやって素敵な舞台を用意していただけると思ってなかったです。あのときは最後にプレーを見せて、これで引退ですっていうのができなかったところを髙田選手が拾ってくれて、本当にありがとうございますの気持ちだったし、10分4クォーターもやらなかったので(笑)わちゃわちゃした感じだったんですけど、今回はグッと趣旨が変わって10分4クォーターしっかりやるというので、また違った緊張感がありました。もう少しゲームライクというかWリーグに戻ったようなプレーができたんじゃないかなって思うし、選手としての踏ん切りを完璧につけてたので、今回は逆にワクワク感がすごかったなと思います」
1カ月前に34歳になったばかりの大﨑は、年齢的にはまだ現役でもおかしくない。出産を機に一旦コートを離れ、結局戻ってくることはなかったものの、「雀百まで踊り忘れず」ということわざがあるように、体に染みついたものはそう簡単には失われないものなのだということを大﨑は実感した。
「今日はたくさんシュートを決められたなって思うので、体力はついていけてないですけど、要所要所の感覚ってまだ覚えてるんだなというのもありましたね。前回のオールスターのときと今回で大きく変わったという感覚もないかなって」
その感覚は大﨑個人だけではなく、チームとしてもあったそうだ。かつてともに戦い、幾度となく勝利の歓喜を分かち合ってきた仲間と、今回こうして再び同じコートに立った中、チームメートとの阿吽の呼吸も呼び覚まされた。これは、頂点に君臨してきたサンフラワーズだからこそ起こり得ることなのかもしれない。
「それこそ前回はコロナ禍で引退した人限定だったんですけど、今回は大神(雄子)さん、吉田(亜沙美)さん、渡嘉敷、宮澤(夕貴)という連覇を始めたくらいのメンバーで、『このフォーメーションやろう』ってやってみたらできて(笑)、シュートも決まって、その喜びは前回とは比べものにならないくらいでした。アドレナリンも出たし、現役選手がそこに入ってくれるのもすごく嬉しくて、今回は本当に特別だったなって思います」
Wリーグではレギュラーシーズン、プレーオフともにMVPの経験があり、日本代表として2016年のリオデジャネイロ五輪にも出場するなど、輝かしい実績を誇るスーパースターでありながら、この試合では「相澤さんなんて現役のときをずっと見てたし、薮内(夏美)さんとか矢代(直美)さん(ともに元・日本航空)とか、この上手さ変わってないなというのが各選手にあったので、『あ~このプレー、このプレー!』って私が一番興奮して(笑)」と昔に帰って一ファンにもなっていたという大﨑。MIP受賞後の挨拶では、現役時代に支えになったファンの存在に感謝しつつ、「今日が終わったらまたそちらの(現役選手を)支える側に移るので、この先もオリンピックやWリーグを応援していけたらなと思います」と語った。大﨑のようなOGの想いも受け止めながら、日本の女子バスケット界は前進し続けていくだろう。
文・写真 吉川哲彦