Wリーグが2ディビジョン制となったことで、13シーズンぶりに入替戦が復活。東京羽田ヴィッキーズとの最終決戦に連敗し、Wフューチャー2位となった三菱電機コアラーズの挑戦を受けたのは、Wプレミア7位のアイシンウィングスだ。今シーズンは渡嘉敷来夢と岡本彩也花を獲得したが、レギュラーシーズン最終週までもつれた自動残留争いで一歩及ばず、思いがけないポストシーズンを迎えることとなった。
結果からいえば、GAME1を大差で制したアイシンが、GAME2も気迫あふれる三菱電機の粘りを2点差でかわし、Wプレミアに残留。この試合で「たぶん人生初」というトリプルダブルを達成した渡嘉敷は、入替戦出場を「リツ(デンソー・髙田真希)さんでもしてない経験」とポジティブに受け止めていたが、梅嵜英毅ヘッドコーチは「渡嘉敷と岡本を入替戦に出させてしまって申し訳ない」と言い、岡本も自身が不安に襲われていたことを明かすとともに「渡嘉敷が一番しんどかったと思う」と長年の相棒を慮った。この短期決戦の結果次第でチームの置かれる立場も変われば、選手個々のキャリアも変わりかねない。良くも悪くも気が張り詰めてしまうのは致し方のないことだ。
その他の選手も、不安は決して小さくなかっただろう。平末明日香も例外ではなく、特にGAME2の最後で三菱電機がファウルゲームに打って出た場面は、スローインの度にミスが起きれば同点、あるいは逆転という息詰まる状況だっただけに、「めちゃくちゃハラハラしてて、『私にボールを出さないで』って思ってました(笑)。タク(渡嘉敷)さんが『私がボールを貰う』って言ってくれたので、頼もしいなと思って任せっきりになっちゃったし、『早く終わってくれないかな』って」と平常心ではいられなかったそうだ。
現在のWリーグの中では貴重な入替戦経験者である梅嵜HCは、この入替戦を前にその独特な雰囲気を選手たちに説いたとのこと。決死の覚悟でアイシンに立ち向かってきた三菱電機の戦う姿勢も、GAME2の異様な空気を生んだ要因だったが、それに対して受け身にならなかったことが勝利に結びついたという実感が平末にはあった。
「GAME1を大差で勝つと次の日は接戦になるっていうのが今シーズンは多くて、だから気を引き締めようということは言ってたんですけど、もうちょっと気持ち良く終わりたかったなというのはありました。でも、キツい時間帯もあった中で一人ひとりが気持ちを切らさずに、最後まで気持ちで負けずにやりきれたのかなと思う試合でした」
トヨタ紡織から移籍してきた平末は、この入替戦2試合とリーグ戦28試合、皇后杯5試合の全てに出場したが、スターター起用は6試合だけで、基本的にはシックスマンとして働いた。ゲームチェンジャーとしての役割を自覚しながら過ごした中、移籍前のポイントガードから2番ポジションに転向したこともあって「まずはシュートから」と意識した結果、今シーズンは1試合平均2ケタ得点をクリア。入替戦もGAME1が12得点、GAME2が11得点と貢献し、GAME2は最後の場面でコートに立っていた。
皇后杯ではチームが初めてベスト8の壁を突破したばかりか、準優勝まで登り詰めることができたが、決勝での平末はフリースロー2本の2得点止まり。しかし、その経験もその後のパフォーマンス向上に役立たせることができた。