ENEOSほどの強豪チームとなれば、ルーキーシーズンからスターターの地位を確保する選手はほんの一握りに限られる。高校あるいは大学までチームの中心だった選手でなければWリーグに進むことはできず、ENEOSほどの強豪ともなればベンチスタートからキャリアを始めるケースが大半だ。聖カタリナ学園高から白鷗大とエリートコースを歩み、常にチームの主軸であった鈴置にとっては、ベンチスタートという立場もまた、慣れない仕事の一つ。「どれだけエネルギーを持ってチームに勢いをつけるかというのが、交代で出る選手の役目」と考え、攻守にアグレッシブなプレーを心がけてはいるものの、まだ安定してはいないというのが本人の率直な感想だ。
「昨シーズンは1年目だったので、試合に出るときはガチガチだったんですけど、今シーズンはちょっと落ち着いてプレーできてるかなと思います。でも、毎試合自分の良いパフォーマンスを出せてるわけではないので、波がないように、短い時間でも自分のパフォーマンスを出せるようにしていきたいです」
Wリーグ11連覇、皇后杯10連覇の金字塔を打ち立てたENEOSとしては、今シーズンの成績は決して満足できるものではないだろう。例年に比べると苦しいシーズンを送っていることは確かだが、そんなときこそ、白鷗大でキャプテンも務めた鈴置の存在は価値あるものになるはずだ。自身のパフォーマンスには納得していなくても、チームのためにできることはプレー以外にもある。
「うまく切り替えられてるときは勝ててると思うんですけど、それができないときはズルズルいっちゃって、自分たちで崩れて負けてる感じなので、自分は若手なんですけど、そういうときに思いきりプレーしてチームに勢いをつけるというのが自分にできる仕事だと思ってます。
シュートが入ったら『ナイス!』って声をかけに行くし、逆に悪いときこそ、ミスしちゃった人にトントンって背中を叩きに行くのが今できることだと思います。そういう細かい気遣いでチームを盛り上げていけたらいいと思います」
黒星が続いている中、アイシンに敗れた試合後に「ミーティングで話が出たんですけど、ここまできたら気持ちの問題。出る人1人ひとりが責任を持ってプレーしていかないといけない。明日は気持ち次第だから全員で楽しくプレーしようと、良い雰囲気に切り替えられたと思います」と鈴置は語った。結局、同日にトヨタ紡織の敗戦を受けてENEOSのプレーオフ進出は決まり、翌日のGAME2はアイシンにリベンジすることもできた。短期決戦はどのチームにもチャンスがある。ディフェンディングチャンピオンであり、皇后杯女王でもある富士通からレギュラーシーズンで2勝を挙げ、長岡萌映子や梅沢カディシャ樹奈など優勝経験豊富な選手も抱えるENEOSは、勝負強さを発揮できるか。「プレーオフに出たら、相手は強いチームばかり。もちろん、自信を持ってやらなきゃいけないので、みんなを信じて、チームが一つになってやるだけだと思います」と、鈴置は気を引き締めて臨む。
文・写真 吉川哲彦