「リバウンダーがたくさんいる分、思い切ってシュートを打ってリバウンド入ることができる」と濱口コーチはシャンソンの強みとする。リバウンド上位15人中、ウチェ(2位・平均10.2本)、吉田舞衣(13位・平均5.1本)、佐藤由璃果(14位・5本)と3人がランクイン(※3月2日現在)。富士通に勝利した試合は、49-33で16本も上回り、リバウンドで圧倒していた。『リバウンドを制する者はゲームを制す』と古から言われ続けてきたが、それでも簡単に勝つことはできず、延長戦までもつれ込んだ。
濱口コーチは「リバウンドを取れた部分は良かったが、セカンドチャンスを無駄にしている場面ももちろんあり、そこはチームの課題として取り組んでいる。オフェンスリバウンドを取った後、また14秒攻めるチャンスがある。そこで焦ってシュートを打つ場面も多い」と指摘した点も伸びしろである。「リバウンドだけは絶対に自分たちが取ること」を共通認識させるため、小池はコート内外で言い続けていた。その結果、リバウンドや球際の勝負で上回り、延長で富士通に粘り勝つことができた。「今後の試合もプレーオフでもそこが重要になってくるので徹底していきたいです」と小池はきっかけをつかみ、目標成就へ向かっていく。
「ディフェンスからブレイク」をベースにビルドアップ
シャンソンひと筋、8年目の小池。昨シーズンまでチームキャプテンを務め、今シーズンも先発としてチームの中心に立つ。ユナイテッドカップで優勝し、プレーオフ直前に富士通から白星を挙げた。チームの変化を小池はこのように語る。
「昨シーズンのプレーオフ セミファイナルで富士通を相手に1勝1敗まで行きましたがその後は勝てず、悔しい負けをしました。今シーズンのリーグ戦の1巡目も完敗していたので、何がなんでも勝ちたい気持ちが自分自身も、チームとしてもありました。延長戦で勝てたことが、チームとして良い勝利だったし、自信がつくようなゲームができました。今日のような粘り勝てたことをリーグ戦の残り2試合も、プレーオフに向けても、もう1回自分たちがやるべきことを徹底して、優勝して最後は終わりたいと思っています」
昨シーズンはともにユニフォームを着て戦っていた濱口コーチとの距離の近さをメリットとし、「自分が思っていることは伝えますし、他の選手たちもウィンさん(※濱口コーチのコートネーム)と良いコミュニケーションを取れていることが、チームとしてもプラスになっています」という小池もまた、シャンソンの伝統を継承する。仲間たちの底上げも実感し、「今までは自分がやらなければいけない立場でしたが、今シーズンは点を取れる選手がたくさんいるので、ゲームメイクするときと得点を狙いに行くときを使い分けながらプレーできています」と良い意味で肩の力も抜けている。
77歳の中川文一ヘッドコーチが今シーズンよりシャンソンに戻って来たが、体調不良により不在が続いている。名将が就任後すぐさま、「ディフェンスからブレイク」をベースにビルドアップしてきたことが開花しはじめてもいる。「ここ数年のシャンソン以上に、トランジションが速いバスケになっています。良い流れでここまでできていると感じています」と小池はプレーオフへ挑む。
「プレーオフ出場は決まりましたが、そこで満足するのではなく、リーグ戦ですべてを出し切らなければプレーオフにもつながらない。今日の試合を勝ち切れたことによって、さらにチームも自信をつけたと思います」
週末のレギュラーシーズンラストゲームも、清水総合運動場体育館での静岡ホームゲーム。プレミア残留に向けて後のない、現在7位のトヨタ紡織サンシャインラビッツと対戦する。シャンソンにとっても、1ゲーム差で追うENEOSサンフラワーズを振り切って3位を守れるかどうか、大事な2連戦となる。
文・写真 泉誠一