「1年目の選手が多い分、トヨタのバスケを伝えながら、そのスタイルを作り上げるのがやっぱり難しかったです。そこでシーズン前半も苦戦しました。途中からアマカ選手が加わり、また少し違ったバスケになった難しさもあります。その中でも、目指しているスタイルは変わらず、そこがブレないようにずっと声をかけてきました。自分にとってもすごく考えることが多くなったシーズンでした。でも、自分自身を客観的に見られるようになり、今もまだ勉強中ですけど、どうやってチームを作り上げていけば良いか、若い1年目の選手をどう同じ方向に向かせるかなど、そのための声かけは成長していると思います」
トヨタ自動車のベースはこれまでと大きく変わらない。「やっぱりディフェンスをしなければ勝てない。ディフェンスの終わり方が、自分たちのオフェンスにも大きく影響してくるので、そこを大事にすることは今日のゲームでみんなも分かったと思います。ディフェンスについては、ずっと言い続けていきたいです」と山本はキャプテンシーを発揮する。
今シーズンも残りはわずか4試合。プレーオフの望みは消えたが、入替戦へまわる7位との差もたった1ゲームしかない。次戦は兵庫県のベイコム総合体育館で日立ハイテク クーガーズと、ラストは大阪府の金岡公園体育館で現在7位のアイシン ウィングスとの大事な試合が待っている。大神雄子ヘッドコーチは「常に成長」を求め、安間は「勝ち切る」目標を掲げた。
Wリーグが終わっても、新たな挑戦が続く。山本は5月から開幕するアメリカ女子プロリーグWNBAのダラス・ウィングスのトレーニングキャンプに招聘された。トヨタ自動車としても、現地5月11日にウィングスとのプレシーズンマッチを合わせて発表し、WNBA公式サイトのスケジュールにも掲載されている。アメリカでの成長を期待しつつも、ぜひ山本やトヨタ自動車にはWリーグでの活躍をそのまま通用させてもらいたい。
「自分が挑戦することによって、日本のスタンダードがもっと上がれば良いなと思っています。自分が日本で通用するプレーやもっと成長した姿をアメリカでも発揮できるように、まずはWリーグでの残り4試合をしっかりと戦い、その姿を日本の皆さんにお見せしたいです」
栃木県開催となったこの試合はトヨタ自動車として最後のホームゲームであり、三浦舞華や田中平和、オコンクウォを輩出した地元の白鷗大学が応援にかけつけた。2月24日、2戦目の会場はブレックスアリーナ宇都宮。ブレックスのスタッフの姿もおり、闘病中のケビン・ブラスウェルヘッドコーチのためにも「チーム一丸となってがんばっている」と話していた。しかし、試合を終え、家路に着いてまもなくブラスウェルヘッドコーチの訃報が届く。つい数時間前までブレックスアリーナにいただけに信じられず、残念でならない。ご冥福をお祈りいたします。
文・写真 泉誠一