昨シーズン下位チームを成長させるフューチャーでの成功体験
昨シーズンは10勝16敗だった三菱電機だが、下部リーグとはいえ今シーズンは倍近い勝利を味わい、「プレー経験が少ない選手も多い中、この2年間でどんどんボールと人が動いて行くスタイルを目指し、それを体現してくれるようになった。本当に選手たちには感謝している」と高田ヘッドコーチはチームの成長を実感する。
優勝した東京羽田にとっても、「昨シーズンまではがんばったけど、報われない試合がずっと続いていた。でも、がんばれば勝てる試合が続き、チームとして崩れないことにつながった」と萩原ヘッドコーチは述べ、成功体験がステップアップさせた。パリオリンピックを経て、さらに成長して戻って来た本橋菜子がチームをまとめてくれたおかげで、「選手たちが勝手に成長して行った感じもある」と続け、フューチャーでのメリットを挙げた。
「それぞれが特徴のあるバスケをし、それらのチームと対戦することで我々も鍛えられた。その中で自信をつけ、例えば皇后杯では日立ハイテクに勝った経験もしてきた。この勢いを持ってプレミアに上がっても、気持ちよくバスケができるようになれば良い。勝ち続けることで、弓の弦を弾くような勢いがついていった」
自動昇格を決めた東京羽田は、フューチャー初代チャンピオンの称号を携え、来シーズンのプレミアでその成果を試す機会を得た。次節3月2日はフューチャー最終戦。東京羽田はホームゲームが続き、ふたたび2〜3千人の集客に期待したい。ラストゲームは大田区総合体育館に特徴のある全6チームが集い、一挙に見られる機会となる。
三菱電機は3月15日よりWリーグプレミア7位チームとの入替戦に挑む。「格上との対戦になるが、自分たちがやってきた1年間の集大成であり、僕がコーチになって2年間取り組んできたものをしっかりとぶつけられる場にしていかないといけない」という高田ヘッドコーチは最終戦の新潟アルビレックスBBラビッツ戦を合わせて、昇格へ向けた負けられない戦いが続く。勝ち星を重ねて来た勢いのまま、入替戦は一発勝負でも良かったかもしれない。しかし、高田ヘッドコーチは3戦2先勝方式の方が「フェアなゲームになる」と楽しみにしていた。
首位攻防戦でプレミア行きの切符をつかむことはできなかった三菱電機だが、誰も下を向いてはいない。ロッカールームへ戻る選手たちは、早くも気持ちを切り替え、清々しい表情を見せていた。藤田も、「シーズンを通して試合に出させてもらったことでどういう準備をすべきか、相手のことを考えるよりも自分のプレーの幅を広げたい気持ちが強かったです。まだ入替戦もあるので、そこに向けてまた練習していきたいです」と語り、短い期間でも貪欲に進化を目指す。遂行力を高め、盤石なコアラーズスタイルを確立し、昇格のチャンスをつかみに行く。
文 泉誠一
写真 W LEAGUE