U24選手たちの経験値を積み上げる育成プロジェクト
「大樹生命 Wリーグユナイテッドカップ 2024-25」を制したシャンソン化粧品シャンソンVマジックのロスターは平均23.6歳。アーリーエントリーを迎えた今、Wリーグ プレミアの中で最年少である。新たにスタートしたユナイテッドカップは、若手選手の経験を積む場としたチームも多い。ベスト4入りを果たしたトヨタ紡織サンシャインラビッツは、都野七海(20歳)とディマロ ジェシカ ワリエビモ エレ (19歳)が先発を担っている。
トヨタ紡織がリーグ戦やカップ戦で4強入りしたのは、2021年皇后杯以来。しかし、当時を知るのは坂本美樹と佐坂樹、東藤なな子の3人しかいない。ルーカス・モンデーロヘッドコーチが就任したのも昨シーズンからであり、「先々を見越して育成プロジェクトを図っており、あと2〜3年はかかるかもしれない。だが、大事なことは止まらずに成長し続けること」とロスターの約半分を締める24歳以下の選手たちの経験値を急ピッチで積み上げている。2大会連続オリンピックに出場した東藤(24歳)もその対象である。
今シーズンの目標は「プレミアに残留すること」。育成期間だからこそ、8強の中で揉まれ続けなければならない。平下結貴と伊波美空の21歳コンビは昨シーズンから倍近いプレータイムを与えられ、モンデーロヘッドコーチの期待も高い。「若いからこそカッコいいプレーをしてしまいがちであり、経験が少ないことでイージーミスにつながってしまう」と実戦を通じて、正しいプレーを習得させている。
1月26日現在、7勝15敗のトヨタ紡織は8チーム中7位。しかし、6位のアイシン ウィングスとは勝率で並ぶ。5位のトヨタ自動車アンテロープスとの差はたった1ゲームであり、2勝2敗だが得失点差で上回っている。15敗のうち一桁点差の僅差で敗れたのが9試合。接戦を落とせば、「若い選手はダメージも残りやすい。ただ、落ち込んでばかりいてはダメだ。スポーツの世界は勝つときもあれば負けるときもある。もし負けても落ち込まず、次に切り替えて前進していかなければならない」とモンデーロヘッドコーチは心を鍛え、常に前を向かせる。
Wリーグ9シーズン目の北村悠貴は、接戦を勝ち切るためには強い気持ちとともに、「技術面や意思疎通の部分をもっともっと上げていかないといけないです」と述べ、練習から積極的にコミュニケーションを取って解決策を見出す。「チームを支えるベテランの河村(美幸)と北村が、若手選手たちの気持ちを落とさないようにチームを支えてくれている」とモンデーロヘッドコーチは感謝する。その秘訣をついて、北村は以下のように答えてくれた。
「若い選手をどう引っ張って行っているか ── 特にそこを意識してやっているわけではなく、たぶんこの子はこれについて悩んでいるんだろうなとか、たぶん今は迷っているだろうな、と自分が経験してきた分、ちゃんと見ていれば分かります。それをそのまま……すごく上からの言い方になったら申し訳ないんですけど、泳がせた方が良いのか、または一言声をかけて、自分が何か具体的にアドバイスするのではなく、そう思っていたらどうする?と考えてもらうように心がけています。それが引っ張っているのかって言われると、正直自分にできることをしているだけ。特に自分が何かしているみたいなことはないです」
自然体で接し、若い選手たちにとっては話を聞いてくれるだけでも解決の糸口がきっと見つかるはずだ。