ベスト4の壁を乗り越えて見えた新しい景色
2005-06シーズン以来、実にタイトル獲得は19年ぶり。テレビ中継の解説を務めた永田睦子氏が現役だった頃まで遡る。Wリーグでは3年連続、2023年の皇后杯でもベスト4まで勝ち進んでいたが、ファイナル進出は2008-09シーズン以来。選手と濱口コーチにとっては、ようやくセミファイナルの壁を乗り越えることができた。新たな景色を見た佐藤は、「我慢の時間帯をすごく強いられた大会でした。以前まではその時間帯を我慢できず、相手にやられてしまう展開が多かったです。でも、ユナイテッドカップを通してすごく我慢し、自分たちの流れに持って来られる力がついたと思います」と成功体験をさらなる自信に変える。
昨シーズンのファイナリストたちは主力を休ませ、ヘルシーに今シーズンを乗り越えるために備えた。チーム一丸となって3連戦を勝ち切り、頂点に立ったシャンソンは着実にステップアップする機会となった。
昨シーズンは一緒にコートに立っていた濱口コーチの印象について、白崎は「厳しいところと選手目線で寄り添ってくれるところをうまく掛け合わせて接してくれるので、自分たちも受け入れやすいです」と言うように、変わらぬ良好な関係を築いている。ウチェやトラオレ セトゥとは同じポジションだった経験を踏まえ、成長を促してもいた。前半になるべく多くの選手を起用し、選手の調子を見極めて最善を尽くし、結果が伴いはじめた。濱口コーチ自身も選手経験を存分に発揮する。
「昨シーズンまでは選手だったのでその気持ちがわかる分、しっかり対話をしながら今は取り組んでいます。中川さんが作ったディフェンスからブレイクを出すスタイルをベースにし、さらにディフェンスの強度を上げて自分たちのバスケスタイルを確立しています。そのためにも、選手がプレーしやすいようにコミュニケーションを取りながら日々練習しています」
今回がはじめての優勝体験となった選手も多い。MVPを受賞した吉田もその一人であり、「昨日の富士通戦が終わった後、やっと決勝の舞台に立てることにワクワクしていました。今日の試合が終わった後も、いろいろ難しい状況の中での大会ではあったんですけど、優勝は自分のバスケキャリアの中では本当にはじめてだったので、こんなにうれしいんだなって感じました」と喜びを噛み締める。
2月22日からWリーグが再開し、リーグ制覇へ向けたクライマックスへと向かう。レギュラーシーズンは残り6試合、富士通とデンソーは早々にプレーオフ進出を決めた。13勝9敗で並ぶ3位・シャンソンと4位・ENEOSが残る2枚の切符に手をかけている。5位のトヨタ自動車アンテロープス(8勝14敗)とは5ゲーム差。シャンソンは、再開直後にそのトヨタ自動車との直接対決が待っている。今シーズンは2連敗中の相手だが、勝てばプレーオフ進出が決まる。
シャンソンのラスト2週はホームゲームであり、待ちに待った今シーズン初の静岡開催。「応援のおかげでコートを走ることができ、今日はそれが優勝にやっとつながったのでうれしい気持ちもあり、いろんな方への感謝の気持ちで溢れました」と吉田が話すとおり、ベンチサイドをピンクに染めるファンや社員の存在が心強い。ユナイテッドカップを合わせて10連勝中のシャンソンが、勢いに乗って名門復活を目指す。
文・写真 泉誠一