昨シーズンのチャンピオン・富士通レッドウェーブがプレーオフ一番乗り
内尾聡菜が残り3秒から決めたバスケットカウント3ポイントシュートは、パリオリンピックでの男子日本代表vsフランス戦を彷彿とさせた。
1月18日、首位を走る富士通レッドウェーブに、今シーズンはじめて黒星をつけたENEOSサンフラワーズとの3戦目。最大11点差をつけ、ENEOSがリードする時間帯の方が多い展開だった。しかし、第4クォーターには富士通が追い上げ、逆転するとシーソーゲームになる。残り32.7秒、町田瑠唯がこの日22点目のゴールを決め、84-84同点。ENEOSのオフェンスに対し、富士通はファウルゲームで時間を止める。残り20秒から3回のフリースローが続いた。1本目を成功させ、2本目は外れる。しかし、そのこぼれ球をENEOSが2度広い、3度目のフリースローは長岡萌映子がきっちり2本とも沈め、88-84と4点差に広げる。残り時間は15.6秒だった。
タイムアウトを使い切った富士通のオフェンス。江良萌香が3ポイントシュートをねじ込み、1点差に迫る。残り6.7秒、ピタリとマークする富士通が、サイドラインに立つ長岡の手からボールを離すことなく守り抜いた。時間は変わらず、富士通に逆転のチャンスをめぐってきた。ENEOSはまだチームファウルが2つ、宮崎早織が富士通の攻撃を切る。残り3.4秒、富士通が自陣からサイドスローイン。パスを出す内尾はひとつ前のENEOSのプレーを教訓とするように、「用意していたフォーメーションができなかったので、まずは5秒にならないことだけを考え、出せるところにボールを出して追いつくことだけを考えていました」と目の前の宮下希保にパスを預ける。コートに戻った内尾がふたたびボールを受け、左45度から3ポイントシュートを放つ。チェックに行った宮崎が勢い余って内尾を倒す。だが、接触前に放たれたボールは我関せずとネットに吸い込まれて行った。残り1.2秒、90-88と富士通が逆転。続くフリースローは外したが、富士通が大逆転勝利し、一番乗りでプレーオフ進出を決めた。
黒星を喫した10月27日のENEOS戦、「私はケガで対戦ができていなかったので、プレーオフを決める大事な一戦に私自身が出場し、しっかり決め切れたのはとても良い経験になりました。2025年最初のホームゲームを勝ち切れて良かったです」という内尾は皇后杯でも優勝の立役者となり、存在感や輝きが増している。
翻って、敗れたENEOSだが、富士通に勝利した試合から星杏璃が先発として戻って来た。
「ケガをして悔しい思いをしたからこそ、思いっきりプレーで返したい」星杏璃
昨年2月2日、パリオリンピックへの出場権獲得を目指し、世界最終予選へ向けた海外遠征時、星は左膝前十字靭帯断裂のケガを負った。2022-23シーズン、優勝したENEOSの先発を担い、一気にブレーク。その後、日本代表にも選ばれ、女子アジアカップやアジア競技大会へ出場。着実にステップアップしていた矢先に見舞われた不運だった。
「ケガをしたことでゼロからではないですが、もう一度積み上げ直さなければならなかったことに対してもちろんショックでした。もう1回やらなければいけないのかぁ、という気持ちにもなりました。でも、今シーズンはチームも新しくなり、責任感が自分の中ではすごく増えています。その分、かかるプレッシャーも大きいので、そこを越えていきたいです」