試合後に取材に応じた近藤は「楽な試合にはならないと思ってたんですけど、ベテランの選手たちが『どんどん打っていっていいよ』ってすごく声をかけてくれて、自信を持って試合に臨めたかなと思います」と振り返っているが、このコメントにもあるように、「ベテラン選手」という単語は近藤の口から幾度も出てきた。昨シーズンの吉田に加え、今シーズンは渡嘉敷と岡本が加入。いずれもENEOSの一時代を築いた経験豊富な選手であり、チームに与える影響は計り知れない。近藤が「ベテラン選手」を連発したのも、その存在の大きさを日々感じているからこそだ。
「ベテラン選手がみんなに声をかけて引っ張ってくれてる中、練習でも自分たちがしっかりついていかなきゃという気持ちで練習量も増えましたし、みんなも自主的にシューティングすることが増えたと思います。
今はディフェンスの面で試合に出してもらっていて、プレータイムも昨シーズンより貰えているので、求められてることをしっかり理解しながら、ベテラン選手たちについていけるように頑張っていきたいです」
その一方で、吉田は「酒井(彩等)とか山口(奈々花)、近藤たちが今までアイシンのバスケットを作ってきてくれたからこそ、今日こういう結果を出せたと思う」と生え抜き組の頑張りを称えた。実績のある選手を補強することにはもちろん大きな意味があるが、それだけでチームが劇的に急成長するわけではなく、アイシンも梅嵜HCを中心に土台を築いてきたことが今大会の躍進を生んだ。
吉田のコメントを本人に伝えると、その表情や話し方にもどこかあどけなさが残る近藤ははにかみながら、あくまでも先輩たちを立てた。相手があまりにも偉大だということもあるのだろうが、まだ21歳の近藤は謙虚で初々しい。
「自分はベテラン選手たちの存在が力になってて、その姿を見て成長できているので、とにかくただついていくだけって感じです(笑)。ついていけてるかどうかはわからないですけど(笑)、期待してくれてる分、頑張らないといけないなという気持ちは強いです」
最終的に優勝に届かなかったとはいえ、チームの歴史を塗り替えたことに変わりはなく、今後の弾みにもなる出来事だったはずだ。Wリーグプレーオフ進出という次の目標に向け、近藤もさらにアグレッシブな姿勢を追求していく。若い近藤のさらなる成長は、そのままアイシンというチーム全体のステップアップに結びついていくだろう。
「自分たちは良いときはすごく良いんですけど、波があるので、その波が下がったときにどれだけ深くいかず、良い方向に戻せるかだと思います。良くないときでもベテラン選手たちの言葉を信じて、自分のことも信じて、ネガティブにならずにどんどん攻めていくことが勝ちにつながると思ってます。個人的には、自分が求められてるカバーリングだったり1対1で抜かれないこと、そこで自分の良さを出せるようにしていきたいのと、渡嘉敷さんがポストで攻めててディフェンスがそこに寄ったときにフリーになることが多いので、そこでしっかり決めきる力をもっとつけていきたいです」
文・写真 吉川哲彦