「前半シュートを打てるときに打たなかったりしたので、メンバーからも『打っていいよ』って言われてましたし、最後はパスが来る感じがして、絶対にシュートを狙おうと思ってパスを待ってました。それで最後のほうはシュートもしっかり打てたし、ディフェンスもやることをやれたかなと思うんですけど、それを試合の最初からもっとできるようにやっていきたいです」
東京オリンピック銀メダリストを3人ずつ抱え、Wリーグでもしのぎを削ってきたデンソーと富士通が皇后杯準決勝で相まみえ、決勝戦さながらの大熱戦を展開したことは、Wリーグがますます実力の拮抗したリーグになっていることを物語る。そして、少なくともデンソーに関してはそれを楽しめる境地に達しているということも、高橋の言葉からは窺い知ることができる。
「優勝するならどうせどこかでやらないといけない相手だし、早いか遅いかだけだからという話はしてました。全員、楽しみという気持ちのほうが強かったと思いますし、羽田戦から2日空いたんですけど、早くやりたいと思ってました」
皇后杯は手放すこととなってしまったが、束の間の中断期間を経て、年明けにはリーグ戦が再開される。富士通に次ぐ2位につけているデンソーは、未だ経験のないリーグ優勝に向けてギアを上げていかなければならない。ただ、群雄割拠の状況でチームとしても自信はあり、その中で高橋も自身に与えられた役割を強く自覚し、成長を期す。
「デンソーはディフェンスがいろいろあって、そこでコミュニケーションミスをなくして、リバウンドを頑張って走れば絶対に勝てると思うので、そういうコミュニケーションをもっと練習から徹底してやっていきたいです。個人的には、ガードがプレッシャーをかけてディフェンスから良い流れを作れるようにいつも意識してるので、スティールとか周りを助けることをもっとしたいのと、オフェンスはスリーを打つだけじゃなくてドライブからキックアウトとか、プレーの幅を広げていけるようにしたいと思います」
皇后杯連覇を逃した直後にもかかわらず、笑顔も交えながら取材に応じていた高橋。ここ数年躍進著しい母校に話が及ぶと、その顔はさらにほころんだ。京都精華学園高にとって大会3連覇のかかるウインターカップが間近に迫っていたとあって、後輩たちの活躍は待ち遠しかったに違いなく、やはり励みにもなっているようだ。
「精華もやっぱりリバウンドに飛び込むチームだし、ルーズボールも必死にやってるのを見ると、自分も絶対にそれは忘れちゃいけないなと思います。見ていてすごく楽しいし、こっちも頑張らないとなっていつも思います」
自身が成し遂げられなかった全国優勝を後輩たちが達成し、昨年になって高橋自身もデンソー入団4年目で日本一にたどり着いたが、母校はインターハイも含めると既に夏冬5冠を手中に収めている。先輩としては負けていられないところだ。リーグ初制覇を狙うデンソーで攻守にカギを握る貴重なシックスマンとして、高橋のプレーに磨きがかかることを期待したい。
文・写真 吉川哲彦