「チームとして同じ意識を持って40分間バスケットをするのに時間がかかっちゃったんですけど、パスを回して、みんなが自分の役割を果たすというのがイーグレッツの、天日さんのバスケット。みんながそれを理解して、今日は楽しんでできました。今までは前半にできてても後半の入りでオフェンスがバラバラになったり、ディフェンスでコミュニケーションが取れなかったりというのがあったんですけど、今日は最後までよくできたと思います。
昨シーズンと比較するのはあまり良くないかもしれないですけど、今シーズンは全員でバスケットをするという意識がより強くなったと思います。信頼してパスを回す、ボールを預けるということを天日さんがよく言うんですけど、そういう部分がレベルアップしたんじゃないかなって。毎週、1日目よりも2日目のほうが良かったというようにどんどん成長してるのは、みんなも感じてると思います」
那須はまだWリーグ2シーズン目。多くを期待するのは酷なようにも思えるが、既にチームの主軸の1人となっている上、チーム自体が若手ばかりのメンバー構成とあって、那須の自覚や責任感も日々強くなっているところだ。
「1年目は自分のことで精一杯で、今シーズンも最初のほうはそうだったんですけど、試合を重ねていくにつれて周りに声かけができるようになったなと思います。それがチームのためになったらいいなと思って行動してます」
ところで、Wリーグ公式YouTubeで紹介されたこともあるが、姫路は遠征の際に往復ともにバスで移動している。秋田とのアウェー戦や、岩手県で開催された昨シーズンのオータムカップなど、陸路で行ける範囲であればどんなに遠方であっても移動手段はバスだ。Wフューチャーの6チームが高崎アリーナに一堂に会する今回も、当然ながらバスに長時間揺られる予定だった。
そのバス移動について問うと、那須は「しんどさは確かにあるんですけど、だからこそ勝ちたいですね」と苦労している分だけ結果で報われたいという想いを一旦は口にしたが、実は今回に限っては事情が異なった。
「本当はバスで朝5時出発だったんですよ。それが、ちょっとアクシデントで急遽新幹線移動になって。高崎駅からここまでは歩いて来ました(笑)」
イレギュラーな事態であり、慣れないことでもあったものの、体への負担が少なくなったことは間違いなく、それがこの日の勝利の一因となった可能性も十分にある。そのことを指摘すると、那須は「そうですね、確かに! これからもお願いします! これ、一番大きく書いてほしいかも(笑)」と声のボリュームが上がった。
もちろん、そう簡単に好待遇が実現するわけではないだろう。リーグ参入3シーズン目にすぎない独立採算のクラブ型チームとして、マネタイズの方法論を確立することが先決だが、そのために最も必要かつわかりやすいのは、選手たちが勝利を目指してひたむきにプレーすることだ。それが、地域に認知され、収益に結びつき、環境を整えていく最善の道。今の時点では、新幹線移動はあくまでも勝利のジンクスと考えるにとどめておきたい。
「Wリーグのチームは関西に1つしかないんですけど、関西でもそんなに知られてるわけじゃないし、もっともっといろんな人に知ってもらって、応援もたくさん来てほしいです」と語るのは那須自身。そのプレーで姫路を “客を呼べるチーム” にすることが、選手たちに与えられた使命と言える。那須は、その最前線でチームを引っ張っていくべき存在だ。
文・写真 吉川哲彦